第15話 復讐
新たに得たスキルである、探索スキル内の【範囲索敵】を発動させる。このスキルは主にダンジョン探索や、見知らぬ土地へ行った時などで護身用スキルとして使われることが多いらしいと、この大陸の情報屋から聞いた。
スキル効果の内容は、直径50m以内なら、どこに居るやつでも目で視認できるというものだ。たとえ、後ろにいたとしても横にいたとしても、壁とかに隠れていたとしても……。
走ってようやく、3階に辿り着いた。たしか、この辺の階にいた気がしたからだ。すると、2番目あたりの部屋から人の声が聞こえる。微かにだけれども。
範囲索敵で調べたら、そこに2人の男性がいた。その向こうからもう2人の女性が現れる。恐らく、男性は槍使いと爪使い。女性はフーラとリサだろう。
「グヘヘヘ。あいつが暗殺者に勝てると思うか?んなわけあるかよ。ってわけで、リサさんいただきまーす」
爪使いがヨダレを垂らしながら、言っていたところに槍使いが、
「ふんっ。お前、ほんとに欲に素直だな。んじゃ、俺はフーラ様をいただきますか」
ドアに耳を当てて話を聞いていた。普通なら、部屋の中の声は外にいる人は聞こえないのだが、暗殺者スキルにあった【超音波】の力で聞こえるようになった。
「ふざけるな……。その、いただきますって意味が……。意味深にしか、聞こえねぇんだよ!!おるぁ!」
俺は力づくで、足で思いっきりドアを蹴り飛ばした。これもまた普通ならできないのだが、俺にはなぜか、システムを破壊できる異能の力があるのだ。
「な、なにごと!?」
最初にわめいたのはフーラだ。
わめくのも無理もないだろう。破壊されるはずのない、ドアを破壊され、予期せぬ侵入者が現れたのだから。
部屋に入ると、やはり男どもは裸で、フーラが脱がされていたところで、リサは嫌がって脱がされるのを守っていた場面だった。
「この状況……。卑猥だな。俺が圏内でプレイヤーを殺せないと思ったか?残念でした。殺せるんですよ。リサを離せ!」
俺は腰に帯びていたハイメタル・ソードを引き抜いてまずは、リサを犯そうとしていた爪使いに斬りかかる。無防備だった爪使いは避ける時間があるはずもなく、防御力0の状態で俺の一撃を受けた。
「き、貴様はあの時の……!?」
槍使いがはっと我に返ったように、俺を見つめてくる。俺は冷たい眼差しで爪使いを睨み、爪使いの8割り減ったHPを確認して怯ませたあと、槍使いを同じように睨みつける。
ガルフォード
レベル82
ランサー
HP17200
と、表示されている。俺より少ししかレベルが違わないが、あの時より大分上がってるとみた。
「こ、こっち見るんじゃねぇ」
槍使いはわなわなしながらも、自慢の槍を装備してかの、【グングニル】を放った。しかし、彼には殺人鬼のスキルはない。受けてもダメージは減らないが、念の為交わす。壁にぶつかる轟音が響いたが無視して、ガルフォードに向かってエレクトロショットを放つ。
そして、範囲攻撃を指定して、フーラにも当たるようにした。フーラの「ぎゃああ
ああああ!」という悲鳴と槍使いの、「うああああ」という悲鳴が実に美味しい。
「俺に殺されたくなければ、降参し、リサを解放して俺たちの前に二度と現れるな」
すると、彼女らは怯えた声で
「わ、わかりましたぁ!解放するから!ほらリサ、早くやつのとこへ行きなさい!」
「んえ?は、はい」
リサは状況を呑み込めてないのか、試行錯誤するも、やがて俺の横に隠れるようにして来た。
「まあ、そんなんでお前らを救う義理なんざねぇからな。お前らは、リサがどんだけやめろと乞いてもやめたか?やめなかっただろ?ましてや、俺をおびき寄せるための人質としてギルドに招待するなんてな」
俺は怯む槍使いと爪使いには、目もくれずに、フーラの元へ行き、HPが微量ずつ減るように調整しながら何度も剣を斬りつける。
「この痛みが……!!お前にわかるか!?裏切られ、斬り捨てられたやつの気持ちと!犯され続けたやつの気持ちが!わかるか!?」
何度も、何度も、フーラに問い続ける。しかし、相手は泣くばかりで聞く耳を持たない。
「わからないと言うのであれば……。少しづつ痛みを強め、挙句の果てには殺してやるよ!」
今の俺は、真の復讐者に変わり果てていた。狂気のような顔をし、剣を強引に扱う。今までの恨みを、晴らすために。
「わ、わかるわけないでしょ!?あんたらの気持ちな……んて!クハッ!?ハァハァ……。でもね、これだけは言わせてもらうわ。あんたは、まさしく殺人鬼よ!」
そして最後に、我の勝ちだと言わんばかりの顔をしてフーラはポリゴンの欠片となって破散した。
そのあとは、周囲の壁を見返すようにして、そこにいるはずの暗殺者たちに忠告をくだす。
「たしか、ギルドメンバーは約30人の中規模ギルドと聞いたが?こんな少数のはずがないよなぁ?もし、リサに手をかけるようなことがあったら……貴様らも殺すぞ」
「ひいいいいい!」
と、わめいてそこに隠れていた25人近くの暗殺者たちは、一斉に現れて土下座をした。
彼らもまた、リサと同じような形で雇われたのだろう。
「お前らにはなんも罪はない。このまま帰っていいぞ。ただし、不審な行動をとったらただじゃおかないからな」
みんな逃げて行くなか、残された2人の男は命乞いを俺にしてきた。
「あ、あのぉ……。俺たちも、なにもしていませんよね?助けてくださいますか」
俺は爪使いの巨漢の男を睨みつけ、
「なにを言うか外道。俺に爪を使った戦闘でダメージを与えてきたではないか。忘れたとは言わせないぞ?しかも、リサを犯そうとしたその罪は、かなり重いものと知れ」
わんわん泣く赤ちゃんのような爪使いの男を、アサシンブレイドで瞬殺し、フーラとヤろうとしていた槍使いにもまた、アサシンブレイドを使って殺した。
後ろを見ると、そこには口に両手を当てて嘘でしょという表情を浮かべていた。次は私も殺されるかもしれないという顔だ。
「別にお前が望むなら、殺しても構わないが、俺はお前を救うために来たんだ。あの時の……。ゲネブエラの時の貴方に、会いたかった……んだ」
すると、彼女は両手を口から離し、俺の頬を両手で包むようにして、
「……。怖かったでしょ?私のために……。ありがとう。自分の復讐も兼ねて、あいつらを殺してくれて。汚くなってしまった私でよければ、貴方と一緒に居させて、ダイモンさん。あの時、酒場に会った時から、私は貴方のことを忘れられなかった。貴方が運命の人だってことに……気づいたのよ」
そして、リサの唇が俺の唇に触れる。一瞬だが、清らかな気持ちになれたと思う。そのあとのことはあまり覚えてないが、同じ宿屋の部屋で1つ屋根のした、ベッドの横にリサが、俺が起きていたときにぐっすり眠っていた。
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