第二章 復讐と新しいフィールドと

第11話 新たな旅の始まり

「いや、これは逆に好都合だ。帰れないというのであれば、学校もインフルの時と同じ扱いの休みになるということだ。レベリングしほうだいではないか」


ログアウトボタンを押しても反応しなかったあの時から、1ヶ月が経過していた。これまでの短い期間で掴めた情報がいくつかある。


まず一つ目は、事件発生間もなくに、次の層へ行くことが不可能になったということ。降りることも勿論不可能だ。アクセスゲートの使い道は同じ層内の村や街のみということになってしまう。


二つ目、各層閉鎖現象にともない、新しいフィールドが出現した。腕に覚えのあるプレイヤーたちは、我先にと向かったらしいが、帰って来たものは一人もまだいないという。


三つ目、ギルドの開設である。ギルドホームシステムが新たに追加された。この機能は、その名前のとおり家を買ったらその家は自分の家となる。そして、自分の家にしたあとにギルドホームにしますかと表示される。そこでしますにすると、家が改築されて大人数で入れるようになる。しませんにすると何も起こらない。


四つ目、レベル上限の解放と定期的にランキング戦が行われるようになるということ。定期的にというのは、月1回とかそのペースである。


俺はこの1ヶ月の間で知り合ったという身分?職業のプレイヤーと例の酒場で雑談をしていた。


「うむ。つまりだなぁ、俺の知ってる限りだとこのログアウトボタンを押せなくなったあと、死んだ……。殺られたプレイヤーはここへは戻ってないということだ」


情報屋である彼の特徴は、赤色の髪をしていてどこかヤンキーじみた髪型、身長は約170ぐらいの平均。年齢は23だと聞く。職業は情報屋だが、メインの戦闘職業はダブルソードマスターだ。


「し、死ぬってことか!?そんなこと……ありえるのかよ」


「ありえるんだよ。実際に、その例があがっているんだからな。これを見てくれ」


動画視聴機能のあるこのゲームでは、自分で動画を録って全国的に発信することができる。その機能のうちの、視聴ページを彼は見せてくる。


「こ、これは……」


画面の中には、新種のモンスターが登場する度に狩りをしてるところを録ってみんなに攻略法を教えてる有名なパーティー。


そのパーティーのうちの、魔法使いが目の前のモンスターの群れのうちから放たれた魔法を喰らって残りHPがわずかだ。その魔法には毒属性が付与されていた。そして、3秒後に魔法使いはポリゴンの欠片となって消えた。いつもなら、一番最後に訪れた村か街のアクセスゲートに転移させられるのだが。


「俺たちのパーティーの約束として、復活したら教えてくれるようにというのがある。しかしながら、あれから30分経っても彼からの通信は来ない」


画面内のパーティーリーダーと思われるプレイヤーが語る。魔法使いが倒れてからも、その有名なパーティーは苦戦せずになんとか群れを全滅させた。そのあと一番最後に訪れたというところに戻ったが、その街の中には魔法使いの姿はなかったという。


死者ノー復活説が浮上した原因が、今の一連の流れである。


「うーん、たしかにこの噂はちょくちょく耳にするが、死者がでたという報告はGMからはないな」


「ああ。そこが気がかりなんだよ。ゲームの状況がこんなことになってるのにGMからなにも連絡が来ないなんてあまりにも不思議だよな。謎すぎるぞ……」


彼は頭を抱え込むようにして、考えている。俺も腕を組んで頭を傾け、考えるしぐさをとる。ほんとうに死んだというならば、このゲームは最早である。


街や村には、結界が張られているのでモンスターが侵入することやPKをされることはない。安全圏といえよう。


「それもそうなんだよなぁ。このゲームから日本へ帰還するには、どうにかしてゲームを攻略する必要があると考えるのもいいんじゃないか?」


俺は情報屋に帰還できるかもしれない可能性を尋ねるが、


「ダメダメ。新フィールドが出現したからって、そこにいるかもしれないしいないかもしれないラスボスをどう倒すんだ?また、ほんとにいるのかすら怪しいのだぞ?」


「そうだ。だからこそ、俺が確かめに行く必要があるんだ。新フィールドへ向かった腕のたつプレイヤーどもは帰って来てないんだろ?おそらく死んだ可能性もある。だから、確かめに行ってやる。俺がお前をフレンド登録してやるから」


そして、その場所にフーラ一行がいるかもしれない。その理由は、情報屋に話してはいない。そして、新フィールドに行けば上層部へ行ける手がかりも見つかるかもしれないと。


「別に構わんが、上から目線だな。まあ、お前が死ななければそれでいい。だがな、十分レベリングしてから行った方がいいかもな」


「ま、ゆーてレベル52だけどな。1ヶ月でだいぶ上がった方だと思うぜ」


「お前、寝てねーだろ……」


最後に「またな」と、別れの挨拶をしてから酒場から出て1ヶ月前にダンジョンで手に入れた装備に着替える。


「行くぜ。このゲームを、終わらせる……そして、彼女を見つけないと」


俺の次なる目的が定まった。


あのリサという少女の救世主に出来ればなりたいということと、フーラ一行をことである。

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