第10話 ログアウト

「こ、こいつがダンジョンボス……」


ついにダンジョンの最奥部にやってきた。そこにあったのは、デカい扉に繋がる長い直線の廊下。その真ん中には、もちろん長いカーペットがひかれていた。そこを通り、俺はボス部屋の扉を開ける。


重い音をたてながら扉は徐々に開いていく。そして、扉が開き終わった時、その部屋内の真ん中にデカい影があった。まるで、巨人のような……。


「腕がなるぜ」


俺は剣を構えて徐々に前進する。すると、ボスの前辺りに足を踏み入れたら飾ってあった松明が一斉に付いて一気に明るくなる。目の前にいたボスの正体がついに見えたのだ。


そいつの名は、【The・ブレイズスワロウ・アーマー】。


ボスの姿は両手にハンマーを持ち、石のような形の頭、ゴーレムのような体をしている。そしてレベルは23。


「グオオオオオ」


ボスの咆哮が迸る。咆哮をしたあとボスは、華麗な横回転をして俺にむかって二対のハンマーを振り下ろす。ズシンという重い音が鳴り響く。俺は直接攻撃を喰らい、壁に激突していたのだった。HPは半分も削られていた。


「い、痛てぇ……。これこそ真の冒険ってやつだ。こいつを倒せば、俺が強くなったと証明できる」


こいつの弱点は、姿的におそらく水だろう。でも、ホントの弱点を知りたい……。


ダンジョン探索中にスキルポイントも十分貯まった俺は、探索スキルの中にあるスカウターを得るために探索スキル中心にその場で振り分けた。画面を表示してる間は、敵に攻撃されないためだ。


「よし、スカウターを覚えられた。まだスキルポイント10も残ってるなぁ。うーむ。どれにするべきか」


天翔覇斬を覚えられるようになるポイントまで、貯めるのもよしだな。ん?なんだこの、改心スキルというのは……。


とりあえず、今始めて目にした改心スキルにスキルポイントを振ってみる。とりあえず10ポイントぐらいでいいかな。


【煌めきの獣神を修得しました】


なんかの召喚魔法か?俺は画面を閉じて敵を見る。


「スカウター発動!」


目を強く見開いて敵の名前のとこを見ると、敵のステータスが表示された。

――――――――――――――――――――

The・ブレイズスワロウ・アーマー

レベル23

HP4500

MP120

物理攻撃力7230

魔法攻撃力0

物理防御力2000

魔法防御力0

すばやさ200

幸運 なし

弱点:氷、水、魔法全般

耐性:土、雷、物理全般

――――――――――――――――――――


な、なんだこのステータスは!?魔法耐性がクソみたいにねぇじゃん。これなら行ける……!!


「オオオオオ」


次なるボスの攻撃が俺を襲った。それは、二対のハンマーをブンブン振り回して勢いよくなげるという大技だ。かろうじて2本のハンマーをかわす。


「あぶな。とりあえずかわせてよかった。でも、魔法なんて修得してねぇしなあ……。あ、煌めきの獣神。あれを使ってみるか」


スキルウィンドウを開き、煌めきの獣神のヘルプを見る。


「ふむふむ、両手を前に出してスキル名を言いながら足に力をいれる。すると、魔法陣が出てくると。なるほど。その目の前に現れた魔法陣から名前選択画面が出てくるからその中からモンスター名を選んで召喚可能ってことか」


や、やっぱり召喚魔法だ。なにを選べるかはその時によってランダムということか。魔法を使える獣神を選びてぇな。性能は、選んだあとに分かるとか鬼畜だよなぁ。


「煌めきの獣神!」


そして選択画面が出てきた。そこには


【The・ゴッドビクトリア】


【The・ゴッドセイバー】


と、ある。ゴッドビクトリアというのはなんなのだろうか……。ゴッドセイバーはおそらく戦の神だろうし。選択中はやはり敵から攻撃されないのか。よし!ゴッドビクトリアにしてみよう。ゴッドビクトリアが選ばれた。


なんと、魔法陣が光り輝き杖と盾を携えて、腰に剣を帯びていた。そいつを表現するには、ドデカい賢者ガイコツと言えよう。


そのゴッドビクトリアは、こちらに向き直ってこう訪ねてきた。


「お前が、俺の主人なのか」と。


「そうだ、俺がお前の主人である。どうだ?俺と共にやつを倒そうではないか」


「ふん!貴様のような弱々しそうなやつが主人とはな。まあ、ほんとにお主が主人なのだろう。よかろう!我が仕えてやっても良い。後ろのあれを倒せばいいのだな。【フルメタル・バースト】」


こいつ……!!めっちゃムカつく性格してやがる!!でもNPCなんだよなぁ。やつの放ったフルメタル・バーストとは、杖から銀色の光が輝いて力強いビームを撃つ魔法らしい。


それが魔法だからか、やつの四段あったHPバーは1秒半分の勢いで削れていく。そして、ついにやつはポリゴンの欠片となって消滅した。すると、赤と金で出来たレア度の高そうなアイテムが入っていそうな宝箱が空から降ってきた。


「サンキュー、ビクトリア!元の地へ帰りたまえ、ゴッドビクトリア」


ゴッドビクトリアは、慈愛に満ちた光に覆われて地面の下へと下がっていった。


「お中身拝見、と行きましょうか」


宝箱を開くと、以下のアイテムを獲得しましたという表示が出てきた。そこには、


【ゴージャスな指輪】

【ゴージャスなネックレス】

【コンバットアーマー】

【クレセントロッド】

【クレセントソード】

【クレセントシールド】


そう書いてあった。それらの武具は、瞬間的にストレージへと入って行った。


「よし!かなり戦えそうな装備が手に入った。装備するのに必要な値があるとかなくてよかった。とりあえずダンジョンの外へ出てログアウトするかぁ」


俺は外へ出て、ログアウトボタンを押そうとした。しかし――。


「ロ、ログアウトボタンを……。押せないだと!?俺は帰れなくなってしまったというのか……」


俺はこの世界に閉じ込められたのだ。どうすれば、日本へ帰れるのか分からない状況でだ。

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