第4話 サーカスのない日

 ザスティンの話だとここが医務室であり、ザスティンのもう一つの仕事場だ。

 ザスティンは治療魔法を習得しており、とてつもない重症でなければ、治療することができる。風邪とかも治療することができる。



 その為にピエロトの右手を両手で包み込んでいたのだ。

 あの感触は忘れることができない、

 女性の手に握られる感触が異性のものだとわかると。

 不思議ともちもち感があり、肉厚もまぁまぁと色々と嫌らしいことを考えてしまう、


「つうことで、わたくしがあんたの教育係に任命されました。ピッツンバーグ団長には後で挨拶しましょうね」

「そうですか、よろしくお願いします」


「なんでそこは嬉しくないのよ」

「先が思いやられたので」


「かーもうあんまりわたくしをバカにしないで、まずはあんたの部屋に案内するわ、それから雑貨用品を買いましょう」


「助かりますザスティンさん」

「よろしい」


 2人は一言二言しゃべりながら歩いている。

 この世界のシステムについて説明がないのは少し悔しい、

 後で教えてやると怒鳴られもした。


「いいこういうのは中途半端に知ることはいけないの、ちゃんと知る必要があるから、ちゃんと準備してからね」

「なんか母親みたいだな」

「もうそんなに年齢は食ってないわよ」

「すみません」


 するとピエロトの部屋がある。

 そこにはボロボロのドアがあり、そこを開けると、

 ベッドが1つに本棚が1個あり、鏡が掛けられており、あとタンスがあるだけ。


 非常に狭いし、埃臭い。


「掃除はしておいたから感謝しな」


「これが掃除した?」


「文句ある?」


「すみません、確かに埃1つありません」


「よろしい、じゃ、次は買い出しの前にこの世界について食堂で説明するわ、この時間はほとんどの団員たちはそれぞれの修行だから、邪魔される心配はないので安心して」


「それは助かります」


 説明を受けている時に、

 色々な初めて会う団員たちとの挨拶をしていたら、

 この世界の説明が頭に入らない恐れがある。


 2人はとぼとぼと歩き、 

 すっからかんの食堂に達した。

 配膳が配られる場所は布のようなものでしまわれており、

 今は営業していませんというアピールだった。


 テーブルとイスがあり、

 先にザスティンがゆっくりと椅子に座るので、

 ピエロトも向かいの席に座ると。

 その後ろからはムンとサンが従ってきた。

 両隣をガードするように2体は収まると。


「では説明するよ。この世界は何個かの大陸によって成り立っているのよ、この大陸の名前はヴィスン大陸と呼ばれている。こんなの誰でも知っていることだけどあんたは異世界人だから仕方がないのよね」


「そのヴィスンにはどのような種族が住んでいるんだ?」


「簡単に言うとね、人族と魔族、動物とモンスターと考えてくれていいわ、人族にはエルフとかドワーフとかがいるけど、魔族にはダークエルフとか鬼族とか、いろいろと派閥が決まっているの。もしかしたら仲間になったら鬼族が人族に入ることだってある。まぁ人族と魔族という派閥があるようなものね、動物とモンスターは明らかに違うけどね」


 ピエロトは深くうなずいていた。

 そういうことか、人族はこういう人種だとか、魔族はこういう人種だから魔族だとかいうくくりはなくて、ようは敵か味方か、味方の種族を人族と呼び、敵を魔族と呼ぶ。なら魔族たちは敵を人族と呼び、仲間を魔族と呼んでいるのだろうか?



 いろいろな謎はあるけど、ザスティンさんの説明を真剣に聞く事にする。


「あらま、真剣になったわね、じゃあ、このクレイジーサーカス団がいる場所はパナリーダム町と呼ばれているの、人口は1000人で名産はワインと葡萄、観光名所はクレイジーサーカス団ってとこ、この町に数年はクレイジーサーカス団はお世話になっているし、観客たちにもお世話をしているってことなの」


「人々は飽きないのか? そんなに同じサーカス団がいて」

「それいい質問よ」



 ザスティンはにやりと笑って見せると。


「このサーカス団は基本的に同じ芸を2度はしないの、毎回違う芸をしている。少しの似たような部分はしょうがないけど、ほとんどは違う芸なのそれにサーカスは数か月に1度程度しかないし、人々が忘れた頃に新しい芸を見せられる。人々はここを観光名所にしてくれたの」



「それはすごいなぁ、吾輩がいたサーカス団では同じ芸をよく見せていたし、こっちのサーカス団も数か月に1度だけだった。確かにここのようにわんさか観客がいる感じではないな」


 ザスティンさんはこくりと頷いて、ムンとサンの頭を軽くなでていた。


「あと、ヴィスン大陸では3個ほどの国があるの、国の名前と性質については今度教えるわ、後貨幣ね、100銅貨で10銀貨で1金貨、これはちゃんと覚えておくように」

「ああ、助かるよ、1銅貨を稼ぐにはどのくらいの事をしないといけない?」

「サーカスのチケットが5銅貨よ、荷運びの仕事だと1銀貨ってところ、今回あなたは臨時だけどクレイジーサーカスをすごく盛り上げてくれたから、30銀貨は貰えるわよ、ていうか預けられていたの忘れてた」


 そういって彼女は空間に箱を出現させると手を突っ込み、

 何の迷いもなく30銀貨を掴んでいた。

 銀貨一枚一枚はとてつもなく薄かったし、とても小さかった。

 日本円にすると1円と同じ大きさだと思われる。


「それなに?」


 ピエロトは思わず訪ねずにはいられなかった。


「何ってアイテムボックスよ」

「まじきたよ」

「何がきたの?」

「アイテムボックスの出し方を教えて」

「イメージして手で掴む感じ」


 ピエロトは手を宙に浮かばし、

 頭の中でアイテムボックスというイメージを想像する。

 次に手を差し出し、引っ張り出す。


 そこには箱があったのだ。


「アイテムボックスについては説明したほうがいいみたいね、まず、あんたのレベルが1だと1キロ、あとはレベルが上がるにつれて増えていく、あんたのアイテムボックスには1キロと書かれてるでしょ、ということはレベルも1ってこと」


「レベルはどうやって見るの?」

「次から次へと質問すると怒るわよ」


「すみません」


「いいわ、ステータスオープンと呟いて」

「はいさ」


 ピエロトはステータスオープンと呟くと、目の前にステータス表が出現する。

 まるでゲームのようにデータ化されている。



―――――――――――

名前:ピエロト

職業:道化師

レベル1

スキル【跳躍】

―――――――――――



 という感じのが書かれてある。やっぱり職業は道化師であったし、スキルは1つしか覚えていない。これで大丈夫なのだろうか?

 少しだけ不安になってきていた。


「あと気を付けないといけないのは光剣の傭兵団よ、あいつらは何でもするから、道を歩いている人を誘拐して奴隷にしたりとか、ひどいことばかりしている。という噂があるの、胸に光と剣のマークがあったら逃げなさい」


「いろいろとありがとう」


「いいってことよ、さて買い出しに行きましょうか」



 ザスティンは頭を下げるとにかりと笑って見せた。

 ちなみに買い出しのボディーガードはムンとサンという2体の犬からぬ狼みたいな奴等だった。


 今のピエロトには跳躍しかないので、

 守りようがありません、

 何度もジャンプすることはできますが。

 それが何の力になるだろうかと。

 とほほと思った。





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