第593話 勝者
俺が考えていたよりもずっと呆気なく、その時はやってきた。
高杉が急に失速したのだ。
空中戦の最中、急降下してきた。いや、落下だ。力を失って落ちてきたように見えた。高杉は辛うじて着地できたものの、立ち上がれないでいた。よくよく見れば口元から血が零れている。ウェントリアスの攻撃を食らった様子はなかったのに。
(あの男、あまり身体が強くないのではないか?)
「ヤツ」の言葉に俺ははっとした。確かに、高杉の死因は結核だった。当時は治療薬がなくて療養をしていたが結局どうにもなからなかったはず。
(虚弱な身体に神に近しい存在を降ろして長時間アレとやりあえるものか)
一方のウェントリアスはまだ余力を残していた。高みから見下ろす姿は神々しさすらあり、まさしく守護精霊といった佇まいだった。
ゆっくりと降下し、俺の真横に降り立った。
「ウェントリアス、強いんだな」
俺たちが死ぬほど苦労した相手を軽く一蹴してのけた“風”はフンと鼻を鳴らした。
「余の支配領域で余が負ける道理などなかろうが。もっとも、ユーマらが余への信仰を取り戻してくれておったからではあるがの」
「そりゃよかった」
「で、アレを始末するのはまずいのであったか?」
とてもまずいです。やめてください。
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