第578話 皇帝の誘い
高杉は朝食会場の小さなテーブル席についていた。
あまつさえ「美味いね」などと言いながら呑気に朝食を摂っている。
「……」
「そんなところで突っ立っていては他の者の邪魔になるぞ。座ったらどうだい?」
テーブルの、高杉の向かい側の席を指し示されて、俺はようやく我に返った。
「あー……、私がお客様の席に座るわけにはまいりませんので」
「真面目な男だね。僕と君の仲じゃないか。気にすることはないよ。さあ」
「はあ」
温厚な口ぶりだが有無を言わさぬ圧があった。そんなことはないだろうが、万が一にもここで暴れられては困る。俺は仕方なく高杉の誘いに応じた。
「俺とあなたの仲といっても、戦場で殺し合っただけだろう」
「ははは。そうだね」
モリモリとパンを食べながら高杉は笑った。
「だが、殺し合いより深い関係性など、古今東西見渡してもそうは見つからないのではないかね?」
「物は言いようだな」
一理あるといえばそうかもしれないが。
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