第575話 勇者の出店計画


 麓の村に新規開店か。

 立地の問題はちゃんと考えてあるんだな。

 それはいい。


 いいんだが。


「どうだろうか?」

「ああ、うん。新規に店を開くこと自体は可能だと思う」


 ノヴァが心配げな顔をして問い掛けてくる。俺の「可」の返事に表情がぱっと明るくなった。


「問題があるとすれば、既存との競合だな」


 勝手に山の中腹で宿屋をやってる俺が言うのもなんだが、ムラノヴォルタで新しくパン屋を開くとなると既存のパン屋あるいは飲食店と競合するだろう。


 多少の贔屓目を差し引いてもノヴァの作るパンは美味い。既存の飲食店のシェアをそれなりに荒らすことは想像に難くない。


「?」


 ノヴァはそういったことはわかっていないようで俺の言葉に首を傾げている。まあ、ノヴァはそれでいい。今はまだ。


「一回村長に相談しに行こう。悪いようにはされないと思う」


 貸しもアレコレ色々あることだし。


「ありがとう、ユーマ殿」

「いいっていいって。でも、パン屋開いたらココはどうするんだ?」

「続けるに決まっているだろう」


 朝から晩までパン焼きまくるつもりかこの勇者。

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