第四部 当館は宿泊施設です皇帝陛下ァ!

第二十七章

第537話 そろそろ俺の番でいいはずだ。


「お待たせしました、ユーマ殿」

「準備はできてるか?」


 王都の外門に姿を見せたノヴァに俺は声をかけた。


「当分は王都には戻れない。忘れ物をするなよ。特に炎の魔剣レーヴァテインとか」

「忘れませんよ」

「ならいい。他のものは買えば済むけど、魔剣は売ってないからなあ」

「ユーマ殿の方こそ、忘れ物は?」

「ない。ないよ。忘れたいことは山ほどあるが」


 俺はうんざり顔で王都の中心部――王宮を振り返った。

 王位継承にまつわるアレコレ。

 帝国との戦争に関するアレコレ。

 戦後の講和条約に関する


 なお、最後のいっこはまだ終わっていない。

 

「心中お察しします」

「おう。察してくれ」

「ありがとうございます」

「何が?」

「ユーマ殿のおかげで我が国は救われました。それにエリザ様も、私も」

「そりゃよかった」


 次はそろそろ俺の番でいいだろう。きっと。

 もっとも、誰かに救われるつもりはない。

 俺を救うのは俺でいい。


「私はユーマ殿の為に力を尽くします」

「どうも」


 だがまあ、手助けくらいはしてもらってもバチは当たるまい。

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