【幕間】

皇帝は待ち望む


「やはり交渉事は不得手だね、僕は」


 生前――というべきか、あの頃は面倒な交渉事は全部他人任せだったからね。かつらさんとか桂さんとか桂さんとか。仕方ないね。


 その割には概ね上手く行ったと思う。


「戦に負けたのは計算の埒外だったなあ」


 ははは、と笑いが漏れた。まさか僕に近い水準の人外が複数居るとは思わなかった。帝国にはいなかったから余計に驚いてしまった。一対一なら負けはすまいと今でも思っているのは単に負けず嫌いだろうかね。


 戦って勝つよりも戦わずに勝つ方がいい。不俱戴天の敵であっても互いに利があれば手は結べる。僕はそれを知っている。


 だから必ずしも戦う必要はない。


「殺してしまっては元も子もないし、な」


 真田悠馬。

 僕と同じ日本人。

 僕の遥か先の未来を生きていた日本人。


 僕は彼に興味がある。

 

「早く視察に行きたいものだが」


 帝国をしばらく留守にするためにはあれこれとやっておかねばならないことがある。会議の席では問題ないと言ったけれど、流石に抵抗勢力の芽を摘み力を削いでおくくらいはしなければなるまい。半月ほどあれば粛清できるか。


「ふふっ、楽しみだね」

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