第453話 血と肉の戦場
帝国銃兵が射列を組んでいく。
一糸乱れぬ隊列変更は帝国軍の練度の高さを証明していた。
「
指揮官の号令のもと一斉射撃。
狙いは王国軍の塹壕線。
王国兵は全て塹壕に身を隠しているから実害はない。ただ、頭の上を銃弾がひゅんひゅんと飛び交うことの恐怖があるだけだ。それを「だけ」と言ってしまうのは酷だとは思う。
「撃ち返すわけにはいかないのか」
「イグナイト殿下、焦れてはいけません」
あっちとこっちでは銃の射程が違う。
もっと引き付けてからでないと意味がないのだ。
「向こうも焦れています。もう少し待てば射程内に入るはずです」
なんて言ってるそばから帝国軍が射列を保持したままゆっくりと前進してくる。
有難いと言えば有難い展開だ。
あんまり近づかれ過ぎるのも歩兵突撃を食らうので避けたいところではあるが、こっちの攻撃が届かないところで延々制圧射撃を続けられるのも気分がよくない。
「もう撃っていいのではないか?」
「落ち着いてください殿下」
イグナイト、督戦向きの性格じゃあないなあ。かといって前線指揮官向きでもない。やはり王族らしくどーんと後ろで構えていて貰うのがベストか。
「あらかじめ射程限界の目印は現場の指揮官に徹底して覚えさせてます。きちんと仕事はしますよ」
前進した帝国が射撃姿勢に移った時だった。
塹壕陣地から発砲音が連続した。
「ほらね」
バタバタと倒れていく帝国兵。
生き残りが撃ち返してくるが塹壕に引っ込んだ王国兵に当たることはない。
「いい感じです」
血と肉が大地を染める戦場を「いい感じ」と評してしまう自分にげんなりしてしまう。嫌だ嫌だ。
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