第454話 膠着は好機なりや

 戦況はあっさりと膠着した。

 力押しでは大量の出血を強いられることを帝国軍が速やかに理解したからだ。


 突貫工事の塹壕が効いている。帝国の銃兵が攻めあぐねているのだ。塹壕戦を想定していなかったのかどうなのか、何にしろ有難いことだ。このままズルズルダラダラとお見合いし続けていたいところであるが、そうはいかないだろう。


 帝国はこんなところで足踏みすることを許容できないはずだ。


 そして、王国は王国で、


「よし、逆襲をかけろ」


 王族が血気にはやって無茶苦茶言い始めていたりするのだった。


「イグナイト殿下、落ち着いてください」


 こういう時に偉い人を諫める軍師的な役割の奴がいるだろ普通。なんで俺が代行してるんだ。


「帝国軍は怯んでいる。折角の好機だぞ!?」

「塹壕から出たら王国兵は漏れなく即ミンチにされますから!」


 イグナイトにはこの状況が好機に見えるらしい。


 王族の無茶な指示が届かない世界で良かった。無線とかの連絡手段があったら突撃命令を下していたかもしれない……。

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