第445話 魔剣使いが揃わない


 バネッサは死を恐れていない。

 むしろ死を望んでいるような節さえある。適当に前線に配置したらすぐに死んでしまいそうだ。魔剣使いは替えが効かないのだから、慎重な運用を期するべきではある。


「――バネッサの使いどころについてはこちらで検討する」

「宜しく頼むよ」

「こちらからも確認すべきことがふたつほどある」

「聞こうか」


 ひとつめ。


「ノヴァはまだ解放されないのか?」

「ノヴァの謹慎は近日中に解くつもりだ」

「なるべく急いでくれ。帝国軍が来てからじゃ遅いからな」 

「わかっているよ、我が英雄」


 ふたつめ。


「風の魔剣使いだったか? 候補者はいるって話だったよな。アレ、どうなってる」

「……あー、うむ。そうだな」


 急に歯切れ悪くなったな。


「何か問題でもあるのか」

「調整中だ」


 調整するようなことがあるのだろうか。


「国の存亡が懸かってるんだが?」

「わかっている。わかっているとも」


 どうも現時点では風の魔剣使いは戦力にカウントしない方が良さそうだな……。

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