第二十三章

第437話 魔剣使いの実力は……


 魔剣の使い手が見つかったとの連絡を受けて、俺は王宮を訪ねた。


 いつもの謁見の間。

 いつものヴィクトールの顔。

 見慣れぬ女性がいる点だけがいつもと違う。


 短い髪のご婦人はどこか昏い目をしており、美しい装飾の施された細い剣を両手で胸にかきいだく様子もあいまって、少々怖い。


「こちらが水の魔剣ルサールカの担い手、バネッサだ」


 ヴィクトールが努めて朗らかに紹介してくれるが、ご婦人――バネッサの表情は変わらず昏い。そして固い。俺を一瞥して小さく会釈。


「はじめまして。宿屋をやっています、ユーマ・サナダと申します」


 相手がどうであれ、挨拶はきちんとすべきだろう。挨拶はビジネスの基本なのだ。


「早速だがバネッサさんの力量はどれくらいだ?」


 とヴィクトールに訊いた。

 剣術を使えるようには見えない。そもそも鎧も身につけていない。ということは魔剣の力を引き出して戦うタイプなのだろう。おそらくは。


「試してみたらどうかね、我が英雄」


 第一王位継承権者が面倒臭いことを言い始めやがった。

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