第435話 宿屋の娘たちと、ホテルの息子

「私たちの作法は父と母から受け継いだものです。それが選んでいただいた理由なのでしたら、こんなに喜ばしいことはありません」


 と、ナーシャは頬を綻ばせた。


「宜しくお願い致します」

「おねがいします!」


 マーシャも一緒にお辞儀をしてくれた。彼女たち姉妹が両親から受け継いだ宿と志をいかに大切にしているかよくわかった。


 ……俺はどうだろうか?


 ふと思ったのだ。

 俺は、親から引き継いだ宿ホテルを彼女たちのように大切に思えているだろうか、と。

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