第426話 鍛冶少年雇用

 10歳くらいだろうか。

 若い、というか幼いとさえいえるその少年は工房のすみに立っていた。顔を真っ赤にして、食い入るように職人たちの動きを見ている。


「ちょっといいか?」

「……なんだよおっさん」


 声をかけた俺に、少年は不快感も露わに睨みつけてきた。


「邪魔して悪いね」

「じゃまだとおもうんならどっかいけよ」

「ちょっとだけ聞かせてくれ。キミも鍛冶屋か? 銃を造りにきたのか?」

「……そうだよ」


 まあ、鍛冶屋通りこんなところにいるんだから鍛冶屋だよな。えらい若いが。


「だったらなんでこんな隅っこで立ってるんだ?」

「おれみたいなウデのないやつは引っ込んでろ、って」


 少年は悔しそうに吐き捨てた。目には涙がじんわりと浮かんでいた。


「……造れるなら俺が捻じ込んでやるが」

「いや、あの銃ってやつはむずかしすぎるよ。おれにはつくれない」

「ふむ」


 銃は無理でも簡単なものなら造ってくれそうだな。


「――じゃあ俺がもうちょっと簡単な仕事を発注してもいいか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る