第423話 天が遣わしたもの……ではない


「ああそうだ。壕と壕を繋ぐ通路も必要です。交通壕? って言うんでしたっけ?」


 俺は更に注文を付けた。名称とかはうろ覚えである。なにせ専門外の話なのだ。


「知らん。私に聞くな。だが分かった。貴様の言うように手配しよう」

「ありがとうございます」

「――やはり化身だな」

「は?」

「戦の化身だ、貴様は。ただの宿屋、いや、ただの人間ではあるまい。或いはが遣わした救世主か」


 神どころか死霊術師ネクロマンサーなんだよなあ。異世界に俺を呼びつけたのは。俺の裡で「ヤツ」がくつくつと嗤っていた。


「まーだ仰るのですか殿下」

「……貴様は異常だ。ただの宿屋というにはいくさ手管てくだに詳しすぎる。何故だ?」

「いや、ははは。色々と学ぶ機会がありまして」


 元の世界あちらで、学生時代若い頃に、ゲームと小説で得た知恵だとは言えないな。正直、生兵法もいいところだ。できればこんなにわか仕込みの戦術まがいの話はしたくはない。繰り返すが専門外なのだから。いつどこで破綻するかもわからない。


「ああ、それから両翼の山の中腹に砦を築きましょう。なるべく木々に紛れるような形で。こちらも幾重にも。ああ、退路も確保してくださいね」

「――私はここで指揮をしている。貴様も数日に一度は顔を出せ……いや、出してくれ」

「承知しました、殿下」


 ――陣地のイメージはできた。あとは、銃か。

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