第411話 水溜まり、雨上がりの空が映る

「俺がここに居るのは、宿屋ホテル業としてやり直すためなんだが」

「上手くいっておるではないか」


 ウェントリアスはそう言ってくれるが、当初の予定とは随分違っている。何故か王国の陰謀に巻き込まれ、挙句の果てには帝国と戦争目前。


「経営に専念できないでいる。ここのところずっと。これから先も暫くは」

「何のしがらみもなく生きていこうなどと考えることが無理筋よな。特に人間ヒトはの」


 ウェントリアスは笑った。


「人間は弱い。ひとりではすぐに死ぬ。だから寄り集まって支え合う。違うかの?」

「仰せの通りで」


 だからといって諦めたくはない。俺は俺のやりたいことに専念したい。



 さりとて放置もできないのがつらいところだ。王国がきちんとした立ち位置をキープしてくれなければ自分の商売も安定しない。


「やりたいことから遠ざかっている気がするんだ」

「やりたいことをやってはどうかの?」

「それで事態が上向くならやるが」

「上向くように仕向けてはどうかの?」


 簡単に言ってくれる。屈託なく笑う守護精霊を見ていると、それも悪くないかと思えてくるから不思議である。

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