第385話 炎の魔剣レーヴァティン

「座れと仰いましたので」

「さっきまでの完璧な礼節は一体何処にお出かけしたんだ」

「わかりかねますが」


 などというどうでもいいやりとりを経て、結局アイを膝に乗せたそのままの状態での情報共有がはじまった。


 俺の方からはエリザヴェートから受けた依頼の顛末を伝えた。王都でのアレコレだ。王位継承権争いのこと。エリザヴェートのこと。ヴィクトールとイグナイトのこと。帝国の侵攻のこと。などなど。


「――幾つかありますが、ノヴァさんが拘束されているのが当館には一番の痛手ですね」

「パンか……」


 俺がいた溜息に押されるようにしてアイは首肯した。


「パンです。パンを焼くにあたって魔剣レーヴァティンがあるとないでは手間が段違いですので」

「今はどうしてるんだ?」

「手隙の者に枯れ木を拾いに山行かせております。木を切り倒すのは守護精霊様が御赦しにならないでしょうから」

「成程」

「そろそろ薪を仕入れなければならないかもしれません。ですのでノヴァ様――厳密には魔剣レーヴァティンが戻らないことには作業効率どころか収益率が下がりまくりです」


 下がりまくりか。そいつは困るな。

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