第381話 忠告の意味も溜息の意味もわからない

 どいつもこいつもアイをねぎらうように助言してくれるんだが、そんなことは言われるまでもない。どうしてこうも念押ししてくるのか。


(そういうところじゃろ)


 俺の裡で「ヤツ」がやれやれ口調で吐き捨てる。

 ……意味が分からん。


「で、そのアイは今どこだ? ウェントリアスはホテルここに俺の帰りをしらせに戻ったとか言ってたが」


 俺の問いに、ナターシャは首を二度三度横に振りながら深く深く溜息を吐いた。


「そういうとこですよ、ユーマさん。オンナゴコロってわかります?」

「額面上の意味ならわかるぞ……」


 ナターシャはまた口をひん曲げて、フロントの裏にある事務所を指し示すようにヒラヒラと手を振ってみせた。


「もういいです。アイさんは事務所ですよ。早く行ってあげてください」

「なんか釈然としないが、とりあずありがとう」

「いえいえ。ごゆっくりどうぞ。本っ当にごゆっくり」


 なんだそりゃ。

 いぶかしげにする俺のことは完全に無視して、ナターシャは動き出す。


「リュカ、ちょっとフロントに立っててもらえる? 私がお客様に茶を出している間だけでいいから」

「はいデスヨ!」


 お仕事モードらしい。

 じゃあ俺も事務所に行きますかね。


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