第382話 フロントリーダーのアイが待っていた

 ビジネスホテルに限らず、元の世界あっちのホテルではフロントのカウンタースペースの真裏が事務所スペースになっているケースが多い。スペース的な兼ね合いと動線上の問題から、そうすることが合理的だからだろう。

 ウチもそうだ。

 だからフロントカウンターの脇から内側に入れば事務所まではほんの数歩だ。

 一歩二歩三歩。

 ほら着いた。


 事務所は綺麗に片付いていた。

 俺が王都に発った時よりも綺麗なほどだ。


 そして、


「おかえりなさいませ、ユーマ様」


 アイが変わらぬ姿でそこに在った。


「ん。ただいま」


 マニュアル通りの完璧な会釈。

 皺ひとつない清潔な制服。

 洗練された所作。


 ある意味、俺の理想とするフロントスタッフの姿であると言えた。

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