第377話 行き届いた手入れと躾が行き届いていないフロントスタッフ

 ブルーノと彼の馬車とリュカに任せた俺は久方振りに玄関エントランスへと向かった。橋を渡ってからこっち側、几帳面に敷き詰められた石畳は指揮を執った人物ものの性格を体現するかのよう。日常的に点検をしているのだろう、外れているどころか僅かな欠けやひび割れすらない。


「ちゃんとやってくれてるようで何よりだ」


 玄関周りの清掃も行き届いており、ゴミなど全く落ちていない。

 かくあるべし、と言わんばかりの風情。


 自動ドアの前に立つと、当然ドアが開く。自動ドアが自動――というか電動だったのは元の世界あっちでの話だ。今は骸骨兵スケルトンウォリアーによる手動ドアだったりする。


「お疲れ様。今帰った」


 ドアを開けてくれた骸骨兵に挨拶すると、彼は嬉しそうにカタカタと骨を鳴らしてくれた。


「ユーマさん! おかえりなさい!!」


 フロントから馬鹿でかい声で俺の名を呼んだのはひとりのフロントスタッフだった。減点。フロントスタッフの接遇せつぐうじゃないぞソレは。


「ただいま。ナターシャ、お前は俺の留守中に何を習ってたんだ」

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