第304話 大注目リリーフエース

「駄目ですよ、エリザ様。ユーマ殿に乗せられてはなりません。あの方の口車に乗ってを再び口にすれば王家を、いえ、第三王位継承権者であられるエリザヴェート様を支持する者はいなくなるでしょう」


 淡々としたノヴァの説得に、「ヤツ」は小さく舌打ちをした。


「余計なことをぬかしおる」

「デニスは近衛騎士として任じられた責を全うして死んだのです。その騎士の言葉を疑っては、何のための騎士か、何のための王家か」


 騎士とは何ぞや。

 俺にはよくわからない価値観だ。

 だが、ノヴァがそれを大切にしていることはよくわかる。

 エリザヴェートは苦い顔で僅かに目を伏せ、聴いていた。


「王家たる者、相応の振る舞いをお願いいたします。我が姫」

「ノヴァ……、私は」


 見つめ合う第三王位継承権者エリザヴェート赤の勇者ノヴァ

 


「茶番はそれくらいでいいかのぅ?」


 ……ミラベル、お前もうちょい空気読んでやれよ。

 

「知らぬ。儂は飽いた。あとは任せるぞ、ユーマ」


「ヤツ」が口の中で呟いた、直後――

 ガクン、と視界がブレ、身体の制御が戻ってきた。

 ってオイ。

 待て。

 ここで丸投げかよ!


(そも儂が全部やるのも変な話じゃろうて。依頼を受けたのはユーマであるしのう)


 それはそうだが。


 全員の視線が俺に集まっている。

 やれやれ。

 俺は溜息をひとつ。

 仕方ない。


「もう、全部終わらせよう」

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