第300話 兄殿下ノットギルティ
「ヤツ」は朗々と、詩でも詠むかのように言葉を紡いでいた。
「されど身に覚えのないヴィクトール殿下からすればとんだ濡れ衣。言いがかりも甚だしいとしか思えぬ所業なわけであるなぁ」
楽しそうに、いや、実際楽しいのだろう。
俺から「ヤツ」に変わってからずっと笑っている。
「イグナイト殿下の一派が罪をなすりつけようとしていると感じても無理からぬことよ。むしろそう考えぬ方が不思議ですらある。のう、ヴィクトール殿下?」
薄ら笑いの
「ヤツ」は視線をつい、別の人物に向けた。
肯定も否定もなかったが、ヴィクトールはおそらく「ヤツ」の言う通りに弟を疑っていたのだろう――
「お主は自身を標的とした架空の暗殺者を仕立てあげることで、兄二人の亀裂を深めようと画策した」
――そう、
「そしてそれは半ば以上成功しておったわけじゃ」
ククッ、と嗤う。
口の端が大きく引き攣れるのがわかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます