第295話 証人インクエスト

 全てエリザヴェートから聞いている。

 逆に言えば、


「お主の証言が真実であるという証拠は無い、というわけじゃ」

「それは……」


 一呼吸。


「――それは暴論ですわ、ユーマ様!」


 エリザヴェートは反論する。


「やっていないことをやっていないと証明することはできませんわ!」


 悪魔の証明というやつだ。

 容疑者が自分の容疑を否定することは難しい。

 同様に容疑者を犯人と証明することも難しい。

 証拠がなければ、だが。


「できると言ったら?」

「え」

「証明できると言ったら、どうかの?」


「ヤツ」は指を立てて、その先に青白い炎のような明かりを灯した。

 死霊魔術ネクロマンシーだ。


「此れが何かわかるか? 魂の残滓。死者の声よ」

「っ!?」


 息を飲む面々を前に、「ヤツ」は朗々と語った。


「此れなるは己が責務に殉じた騎士デニスの魂を呼び出したものである」


 くっく、と嗤いながら、


「――死者審問インクエスト。儂を侮るでない。証拠くらい揃えておるわ」

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