第283話 商人は こんらん している

「この銃は最新式でね。後装式だからだ弾込めは後ろからだよ」


 そう言って、ジイサンは銃の後ろ部分をガキンとへし折った――否、開いた。


「なるほどな」


 そうやって弾を込めるのか。

 いや、感心してる場合じゃあない。

 先に銃口を向けていたのはこっちだ。

 こちらに向けられていても仕方ない。


 アタシはごくり、と唾を呑み込んだ。

 隣でリュカは喉をぐるぐると鳴らし、警戒している。

 けれど、ジイさんは銃を置いて両手を挙げ、


「悪ふざけが過ぎたね。ここまでとしよう。よくやったね」


 と、降参の意を示した。


「は?」


 ……どういうこった? アタシの理解がついていかねえんだが?


「お嬢ちゃんは大したものだ、と言っているだよ。信念も、果断さも、判断力も申し分ない。よほど良い商人から薫陶くんとうを受けているようだね」


オバサンメアリと――オッサンユーマの顔がアタシの脳裏を掠めた。いや、オッサンは違うだろ。


「足りない経験と知識はこれから積み上げていけばいいからね」


 ええと、つまり、この交渉はアタシの勝ちってことでいい、のか……?

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