第269話 獣人は勉強が苦手

 魔法使いナターシャの教えに背くことに抵抗を感じつつ、商人アタシの提案にも興味がある。

 リュカはそんな素振りでそわそわしていた。


「――今日のはお勉強だ。だからあの魔法使いの子も叱ったりしねえよ」


 アタシの言葉に一瞬顔を明るくさせたが、


「ジブン、お勉強苦手デスヨ……」


 おっと、今度はそう来るか。

 手のかかる子だなあ。


「堅っ苦しく考えなくていいって。銅貨2枚で買える、この市場でリュカが一番気に入るモノを探すんだ。限られた金額で最高の買い物をする。幾らでもお金を使っていいものを手に入れるんじゃあない。制限のある中で最高を求める。それが商人ってもんなんだよ」

「うにゅー……」


 くそっ、難しく言い過ぎたか?

 人にモノを教えるのは難しい。


「とにかくだ! アタシがついててやるからやってみよう? な?」

「……クラリッサのお買い物はいいデス?」

「一緒に見て回ってる間にアタシはアタシで掘り出し物を見つけるさ」


 それくらいのことはできる。

 商人舐めんなよ。

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