第266話 商人の過去と獣人の現在は合わせ鏡の如く
リュカはえっへん、と胸を張ってこう言った。
「ジブンは弱いデス。だからアイが教えてくれたデス。サンジューロッケーニゲルニシクハナシ、って!」
三十六計逃げるに如くは無し、か。
「意味わかってるか?」
「危ないと思ったら逃げろ! デス!」
「ああ、うん」
……大体合ってる、か。
あのチビ女、リュカっていうよりはアタシの身の安全を優先してそう指示したのかもしれない。
そんなことを考えていると、
「クラリッサ」
ぎゅ、とリュカに手を握られた。
「さっきはありがとデス。嬉しかったデス」
「なんもできなかったけど」
ただ吠えて叫んで、殴られそうになったところをリュカに助けてもらっただけ。
なのにリュカは首をぶんぶんと横に振った。
「そんなの関係ないデス。ジブンは嬉しかったデスヨ!」
「うん。そっか……」
――獣人に対する差別は根深い。
王国にも獣人蔑視の風潮が無いではないけれど、帝国はそんなレベルではない。
国家そのものが人間以外の人種を排斥しているのだ。
その思想が原動力になり大陸西部の過半を征していると言っても過言ではないだろう。
けれど。
だからといって。
アタシはそんなものは許容できない。
リュカと知り合ったっていうのも勿論あるけれど――、それ以前に、物心ついた頃から侮蔑され苦汁を嘗めさせられ続けてきた
「クラリッサ? どうかしたデス? おなか、痛いデス?」
「――大丈夫。大丈夫だから。ちょっとだけ待っててくれ」
気持ちを落ち着けるから、さ。
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