第213話 自由奔放or素行不良

 メシも食ったし興味深い話も聴けたし、一度エリザヴェートのところに戻るか。

 俺はルーカスとドロテアを残して、席を立った。


「じゃあ、ふたりともまた今度」

「御馳走様でした」


 と一礼するのはルーカスで、手をヒラヒラ振ってくるのがドロテアである。


「不審者に間違われないようにねー」


 そんなふたりに見送られ、食堂を出て、俺はしばし歩いた。




 ――で、だ。

 どこに居るのか皆目分からん。

 というか、来た道がそもそも分からん。


(本当にユーマは愚かじゃのう)


 やかましいわ。


(ほれ、次の廊下を右、その先の階段を登ってしばし真っ直ぐじゃの)


「!」


 ミラベル、覚えてるのか?


(忘れいでか)


 はー、たいしたもんだこの死霊術師ネクロマンサー


(そしてそこの先に、エリザヴェートの傍仕えらしき女がおる)


 その言葉通りに、ドロテアと同じ格好をした女性が広い王宮の廊下をうろうろしていた。


「姫様ー、どちらにおいでですかー? エリザヴェート様ぁ?」


「もしもーし」

「あら、貴方は」

「エリザヴェート様に呼ばれて参りました、ユーマ・サナダと申します」


 この口上にもそろそろ慣れてきた。

 女性は、「あ、はい」とすぐに得心したようだった。


「王女殿下がどうかされましたか?」

「どこにも居なくなってしまいまして!」


 居なくなった?

 ちょっと目を離してる隙になんてこった。

 というかノヴァがくっついてたはずだろう。


「また王宮を抜け出して街に繰り出したにちがいありません……!」


 そっちかい。というか「また」とか。常習犯なんだな。

 奔放というか素行が悪すぎるぞ、エリザヴェート。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る