第206話 王子殿下のご評判 

 “王位継承権者のことをどう思うか”

 そんな俺の問いに、ルーカスはしばし絶句。

 棒を飲んだような直立不動の姿勢のまま、やがて恐る恐る口を開いた。


「で、殿下を評するなど、衛兵の身である平民如きには不遜極まりなく……」

「真面目だね、君は」

「いえ、あの」


 俺は自分の肩を上げ下げするジェスチャーをしながら、


「そんな肩肘張らずにこんな印象の方だ、ってことを教えてくれたらいい」

「ですが……、ですがユーマ殿」


 逡巡と焦燥が見て取れる。

 ルーカスから王子の情報を獲るのは無理そうだ。

 それにしても本当に真面目なやつだ。

 これはこれで得難い資質ではある。


 で、一方のドロテアはというと、


「ヴィクトール様はー、すっごい良い人なんですよ!」

「ほうほう」


 軽い。助かるわー。マジで。


「私たちみたいなメイドにもすごく気さくに挨拶してくださるんです。騎士様や大臣方は見向きもしないのに!」


 ほお。人柄は良い、という評価ね。

 なるほど?


「それに、私たちの話も聞いてくださいますし」

「話って?」

「仕事するのにこーゆーとこ困ってる、とか、アレが欲しい、とか、そーゆー」

「要望を聞いて叶えてくれる?」

「そうです。そんな感じ」

「ありがとう。参考になったよ」


 少なくとも宮仕えの下々の者には優しい殿下なわけだ。

 忘れないように脳内メモに書いておこう。

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