第十一章

第179話 定命の者による、営々たる積み重ね

 朝早くに野営地を発った俺たちは王都を目指して進んでいた。行けども行けども荒れた土地とまばらな森。手つかずの自然と言えば聞こえはいいが、荒涼とした大地が延々と続く。


 ――結局昨夜は襲撃は無かった。


(野生の獣が寄って来た程度よ)


「ヤツ」の言葉に俺は疑問を差し挟む。

 その野生の獣はどうした?


(結界に呑み込んで骨まで喰ろうてやったが?)


 どうやら平常運転だったらしい。

 くわばらくわばら。

 

 それにしても、だ。昼間には襲撃してきておいて、夜は完全放置。はてさて一体どういうことだろうか。首尾一貫していないというか、行き当たりばったりというか。ちぐはぐな感じ。


(考えごとも良いがユーマよ、見るがよい。儚き人間が長い歳月をかけて成したを)


「ん?」


 言われて御者台の方に身を乗り出してみると、街路の北側、やや離れた場所に物見の塔と砦が散在しているのが見えた。対帝国の備えだろう。国境警戒線として事足りているのかどうかは不明。それはさておき、


「道以外の人工物を久しぶりに見た気がするな」


 そうこうしているうちにどんどん人工物が増えてくる。

 畑。

 灌漑かんがい施設。

 厩舎。

 そして、家。

 半ば集落のような光景の更に先には――


「見えてきましたぜ、旦那」と、御者台のブルーノが言った。


 ――城壁に囲まれた巨大な都市が広がっていた。


「あれが王都か」


 都という言葉に偽り無し、といったところだな。

「ヤツ」が業と言うだけの威容を誇っていた。

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