第174話 野営の夕餉にて
そんなわけで俺とエリザヴェートとノヴァ、それに商人の四人は野営をしで一晩明かすことにした。
「~♪」
何故かご機嫌なのはエリザヴェートである。
彼女とノヴァは、商人に正体がバレるとマズいので、ふたりともフードを深く被って顔を隠している。隠しているが鼻歌歌って楽しそう。
「おい、あんまりはしゃいで妙なことするなよ」
「だってこういうの、はじめてですもの!」
「いや、クラリッサに連れられてウチまで来た時も野宿しただろ」
「あの時は不安しかございませんでしたので」
さいですか……。
商人は興味ありそうにチラチラこちらを眺めていたが、気を遣って余計な詮索はしないでいてくれた。
「くれぐれも迂闊な行動だけは慎んでくれよ」
「かりこまりました」
「……ノヴァ、目を離すなよ」
「承知した」
とかごちゃごちゃやってる間に商人が焚き火の準備やらを万端整えてくれていた。重ね重ね申し訳ない。王都に着いたら追加で報酬を渡すことにしよう。うん。
その焚き火を囲む。
夜露を凌ぐためのマントも商人に借りた。
更に、
「粗末な保存食ですが」
とパンと干し肉まで貰ってしまった。三人分。
地獄のように固いパンと鬼のように塩辛い干し肉を食べ終わってから、
「貰ってばかりもよくない。お返しにこれを受け取ってくれ」
俺はスーツのポケットから
「食後のデザート代わりだ。包装を剥がして食ってくれ」
下手すると食事よりカロリーあるかも知れんが。
「美味しいですわ!」
と声をあげたのはエリザヴェートだった。
「王宮でもこれほどの甘味はふぐっ」
ノヴァが慌てて口を塞いだ。が、間に合ってなかったな。
王宮、ってばっちり言っちゃってるな。
俺はそろりと商人の方を見た。
彼は目を爛々と輝かせて俺に視線を向けていたのだった。
……んん?
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