第97話 営業許可証(仮)ってカッコカリってなんだ?

 リュカが戻った数日後、今度はノヴァが帰って来た。

 帰って来たことはいい。

 営業許可証を取ってきてくれたことは有難い。

 だが。


(仮)カッコカリってなんだよオイ、赤の勇者殿?」


 俺は一階の朝食会場の隅で、ノヴァと向かい合わせにテーブルについていた。

 営業許可証(仮)をテーブルの上に置く。

 俺が欲しいのは(仮)とかがついてないやつだ。


「私も努力はした。王にはご納得いただいたのだ。ただ、大臣連中の反発がことほか強くてだな」

「――わかった。約束通り俺が王都に行くことにする」

「ちょっ、ちょっと待ってくれ! 話はまだ終わっていない。最後まで聞いてくれないか、ユーマ殿」


 俺は脇に控えていたアイに視線を向けた。


「……アイ、コーヒー。ノヴァにも頼む」

「かしこまりました、支配人」


 コーヒーが来るまでのしばしの時間俺は仏頂面で待機。

 アイはすぐに戻って来た。


「どうぞ」


 丁寧な所作でノヴァと俺の前にコーヒーを置くと、俺の脇に控えた。


「で、話の続きは?」

「王国としては条件付きでなら営業を認める、ということだ」

「条件付きだと」


 そういうのはロクなものじゃないと相場が決まっている。


「条件は、監察官を常駐させることだ」

「首輪をつけときたいわけか」

「そうだ」

「気分のいい話じゃないな」

「それがでもか?」


 おっと?


「常駐するのは私、赤の勇者ノヴァだ。監察官の話になった時に自薦して認めさせてきたぞ」

「……そうきたか。ちなみに(仮)が取れるのはいつなんだ?」

「経営開始から一年程度だな。監察官が問題ないと判断し、報告が受理されれば正式な営業許可証が発行される」


 ここらが妥協点か。

 ノヴァもそれなり以上に無理してくれたんだろうし。


「もう一点確認だ。常駐するノヴァの部屋代は王国に請求すればいいんだよな?」

「いいぞ。私も個人負担はつらいからな」

「じゃ、改めてよろしく、監察官殿」

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