第60話 リュカと俺の間に横たわる問題

 急に怒鳴り散らす俺に、ふたりと一匹は驚いた顔をした。

 アイは顔をこちらに向けただけだったが。


「びっくりさせてすまん」


 と、俺は素直に詫びた。

 俺の中で「ヤツ」は無言。そのまましばらく黙ってろ。


「それで、リュカは今はシュラと一緒に冒険者をやってるんだよな」

「はいデス」

「冒険者稼業でちゃんとメシは食えてるのか?」

「……」


 リュカの無言が雄弁に現状を語っている。だろうな。あのリックの馬鹿如きにいいように使われている時点で食えてないのは想像に難くない。


「リュカ、これは俺からの提案なんだが」

「うにゅ? なんデスカ?」

「うちで働かないか?」

「ユーマ様、それは――」


 抗議しかけるアイを片手を挙げて制する。


「問題は全部解決する。どうせ問題の方から来てくれるさ」

「にゅー……」


 リュカは短かく太いの眉をハの字にして唸っている。

 彼女なりに色々考えて、迷っているのだろう。

 受けている依頼のこととか、俺のこととか。

 ナターシャやアイ、勿論シュラのことも。

 それでいい。

 考えることを放棄したら人間終わりだ。それは獣人も同じだ。


「今すぐに返事をしなくていいから、考えてみてくれ。このまま冒険者を続けるか、俺に雇われて俺の仕事を手伝うか」


 その時だった。


「ユーマ様」


 アイが淡々とした口調で告げる。


「見張りの骸骨兵スケルトンウォリアーからですが、そのがこちらに向かってきております。如何致しますか?」


 噂をすればナントヤラ、ってやつだ。丁度いい。


「勿論、盛大にお出迎えだ。全員配置につかせろ」

「承知いたしました、支配人」

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