第三章
第42話 ちょうちょう の つかい が あらわれた。 って、村長じゃないのか。
俺とナターシャはクマを倒した後、宿屋の一階の居酒屋らしきスペースで食事を摂ることにした。ふたりとも集中と緊張でくったくたである。異世界の酒に興味はあるが、何か起きた時に酔って対処できないでは洒落にもならんので飲むのはやめておく。そんなわけで何かの果実のジュースのようなモノで乾杯した。
「はい乾杯」
「クマ退治お疲れ様です!」
「おめでとうナターシャ。お前の手柄だ。もっと誇っていいんだぞ」
「いえそんな! ユーマさんが私の魔法を私以上に理解してくれたからですよ!」
クマ退治の一部始終を見ていた人たちがわらわらと詰めかけてなんだかんだと奢ってくれる。酒は固辞したが、食べ物は有難く頂戴した。財布に優しい。
俺は何肉かよくわからん肉の照り焼きを食べつつ、
「あのクマはどうするんだろうな?」
「解体してみんなで分けるらしいですよ。私たちにも貰う権利ありそうですけど」
「要らんよ。クマ肉とか食ったことないし」
「毛皮は防具の素材になりますし、換金すればよくないですか?」
「なるほど、毛皮か。クマの絨毯ってのも有りだな。ロビーにでも置くか」
「趣味悪いですねユーマさん」
「冗談だよ」
などとやっていると、
「お食事中失礼します」
「ん?」
見知らぬ若者が声をかけてきた。
「私は、町長の使いで参りました。ナターシャ様に是非一度町長にお会いいただきたく」
「……だそうだぞ。果敢なる勇士ナターシャ様」
「ちょっ、やめてくださいよユーマさん!」
町長ね。村長ではないのか。
「今回ご尽力いただきました件で、直接御礼申し上げたく」
「どうしましょうユーマさん」
「まあ、いいんじゃないか? 明日でよければ」
今日は疲れてるしな。
「勿論です。それでは明朝、迎えに参ります」
深々と頭を下げて若者は去っていた。
「よかったですね、ユーマさん!」
「いやいや、ナターシャ様へ名指しだから。俺は添え物だから」
「だからそういうのやめてくださいって!」
こういう他者の評価がちょっとずつでも彼女の自信になればいいが。
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