第10話 安全配慮義務違反の監督者は第一異世界人に遭遇する

 俺は骸骨兵スケルトンウォリアーたちをみっつのグループに分けて指示を出すことにした。ひとつめには館内の清掃を、ふたつめにはホテル周辺の探索を、みっつめには川と揚水ようすいポンプの接続を。

 

 俺はといえばみっつめのグループの監督だ。水は今の所一番の懸案事項であるからだ。といっても見ているだけだが。


 現場では骸骨兵たちが互いの骨を支え合って崖下に降りたところだった。何体かは転落して粉々になっていたが、徐々に復元しているところだった。元の世界あっちだったらカンペキに安全配慮義務違反だなコレは。

 防火設備から取り外した消火ホースを川底に固定して、反対側を揚水ポンプの水道管に繋げばオーケーだ。


「まずまず順調そうだな」


 俺は、太陽光パネルから得られる電力は揚水ポンプと厨房の保冷庫に絞って運用することに決めていた。あ、それと俺のノートパソコン。エレベーターや空調まではまかなえそうにない。高層階に人を宿泊させるのは厳しいかもしれないな、と思っていると。


「ユーマ様」


 斜め後ろに立っているアイが俺を呼んだ。


「どうかしたか?」

「私の掌握していない動体を検知しました、ユーマ様」

「掌握していない動体?」


 つーと、骸骨兵以外ってことか?


「どうやら人間のようです。三人組です」


 ふむ、記念すべき第一異世界人だな、などと思っていると、向こうも俺の姿に気付いたようで歩調を早め近づいてきた。

 三人組の先頭の、身軽そうな男が軽く挙げた手を振りながら、


「アンタら早いねー。俺らが一番乗りだと思ってたわー」


 ……一番乗り、だと?

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