第7話 むかしむかし、あるところにぜんりょうなしりょうじゅつしがすんでいました

 その死霊術師の名前はミラベル。

 ミラベル・アンクヤードといいました。


 彼女は熱心な魔法使いでした。

 毎日毎日、来る日も来る日も、死霊魔術の研究と実験に明け暮れていました。

 その努力が実って、当代随一の大死霊術師になりました。

 よかったですね。


 けれど、それを快く思わない人々がいたのです。

 大勢、いたのです。

 なんということでしょう。

 自身を正義と信じる彼らは彼女の家を薪で囲みました。

 薪に油をかけて火を点けたのです。

 憐れな大死霊術師は真っ黒焦げに焼きあがってしまいました。

 芯まですっかり火が通りウェルダンです。


 ですが彼女は諦めませんでした。

 彼女は魂のみの存在になっても諦めませんでした。

 文字通り死力を尽くして、現世に留まろうとしました。


 そのためには魂の容れ物が必要でした。

 生に、世界に、それ以外の何かに、

 ともかく強い未練や後悔や執着のある、

 彼女の魂に良く馴染む容れ物が必要だったのです。


 彼女は探しました。

 探して探して探し回って、とうとう別の世界にまで至りました。

 その甲斐もあって彼女は遂に出会いました。

 極上の容れ物と魂に。


 彼女とはひとつになり、新たな物語を紡ぐことになったのです――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る