第132話 求人応募とダンジョン攻略

 リックのヤツが最初にやって来てケチがつきまくってしまった求人募集なわけだがその後は、まずまずのペースで応募が来るようになった。まだ採用には至らないが。


 唯一問題なのは――


「約半数が未だにダンジョンと勘違いしている冒険者だってことだ」


 いくらなんでも情報の伝播が遅すぎるだろ。

 フロントでぼやく俺の隣にはいつも通りアイがいる。

 アイは俺の愚痴に付き合うでもなく、淡々と報告をしてくる。


「空き地の整地が完了しましたので思い違いをしてやってくる冒険者の対処は、本日よりそちらで行います、ユーマ様」

「うん」

「ホテルを破壊されては困りますので」

「そうだな」


 ホテルの周辺の開発がどんどん進んでいくなぁ……。


「冒険者についてですが、まずはアイが対処をします」


 いきなりボスキャラなんだが。まあいいか。


「アイが敗れた際は、ノヴァさんにお相手願います」


 次もボスキャラか。

 ところで、


「ノヴァは承知してるのか?」

「はい、ユーマ様。王国の認可したホテルへの攻撃は王国そのものへの攻撃に等しい、とのことで協力頂けるそうです」


 確かにその通りだな。営業許可証万歳。


「万に一つもございませんが、ユーマ様のご登場はその後となります」


 確かによっぽど出番はなさそうだな。というか、アイとノヴァを二人抜きできる相手に俺は勝てないと思うぞ。


「すみませーん!」


 おっと、お客様か。

 玄関からロビーにやってきたのは三人組の若者たち。


「ここってダンジョンじゃないんですか!?」


 残念、冒険者の方だった。

 

「当館はビジネスホテルでございます」

「え? びじね? 何ですか?」

「――ダンジョン攻略に来られた冒険者の方は表へどうぞ。ユーマ様、申し訳ございませんが、フロントをお願いいたします」

「了解」


 ややあって轟音と悲鳴が外から聞こえてきた。

 秒殺だったな。

 その後、アイが何食わぬ顔でフロントに戻って来たのだった。

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