スフィア・フォン・クラウン

 アルフィリーナは引きこもっていた。


「外は怖い……外は怖い……」


 部屋の隅で毛布をかぶり、小説や魔法書などを読みふける、実に怠惰で自堕落な生活を送っていた。


 様子を見に来た皆がカーテンを開けようとすると『キシャー』と発し威嚇する。


 部屋にはランプのみで灯りが灯され、なんとも不気味な雰囲気がただよう。


 そして、ポテちっぷやコーラス等を主な食料とし、ボリボリとむさぼっていた。


「うふふ、引きこもり、最高です……」


 このように、シスターアルフィリーナは仕事をする事もなく、だらだらと日々を過ごすのだった。



ーーアルファン王国謁見の間



「うーむ、金銭問題といい、奴隷市場での一件といい、度重なる極限状態に、アルフィリーナは精神的にすっかり病んでしまったようだ……一体どうしたものか……」


 謁見の間にはパラディンセリーヌ、盗賊キャロット、大魔法使いカルディナがいた。


 カルディナは子猫と遊ぶのに夢中なので、実質三人での話し合いである。


「読む本が無くなったら出てくるんじゃないか? うちの親父は英雄だけど、だらだらと暮らしてても、酒が無くなったら買いに出かけてたし! とにかく格好良い親父」


「いや、それは病んでるのではなく、ただ出不精なだけなのではないかな? それにあの修道院は誰もいない間図書館として機能していた分、書物は尽きんぞ?」


「そっかあ……」


 待ってたかのようにキャロットが手を上げて発言する。


「私はさぁ、出ざるを得ない状況に追い込んだら出てくるんじゃないかな~とか思うんだけどなぁ、いっそ修道院を爆破しちゃうとか? きゃははは!」


「確かに爆破くらいでアルフィリーナが死ぬとは思えんが、ちょっと過激すぎるな」


「でもこのままだと村を追い出されたりしちゃうんじゃないの?」


「いや、追い出されはしないが、シスターとしての貢献が少なすぎるので『必要のないシスター』だと思われてしまうぞ……」


「じゃあいつもと変わらないじゃん」


 言い放つセリーヌの口を塞ぐキャロット。


「それもそうか……」


 あちゃーという態度をとるキャロット。


「いっその事シスターではなく、薬師とかモンクとかに転職できれば英雄になれるのだが、困った事にこの世界では転職できるのは村人のみだ、セリーヌが村人から初めてパラディンになったようにな」


「え? じゃあ俺ってもう他の職業つけないの?」


「え? 知らないで『就職』したん?」


(しかし、勇者からシスターになったという事は、何かしらのイレギュラーは存在するのかもしれん……謎だ)


 話は『俺は一生打たれ続けるだけなのか』というセリーヌに対し、皆で『盾役は使い捨て』という不遇を説明し『英雄アルベルトになるのであろう?』から『やってやるぜ!』あたりまで進んでいた。


 見かねたカルディナがレジーナにそっと耳打ちする。


「ん? なるほど……おお! それは面白い!」


 ここに一つの妙案が生まれた。



ーー次の日



「あの……私になにか御用ですか? お姫様……」


 城内でメイドを務める村娘スフィアは怯えていた。


「おおおおおお! その怯え方、まさしくアルフィリーナだ!」


 カルディナがなんとなくアルフィリーナに似ているなと思い、なついていたメイドなのだが、両親が亡くなり孤児となっていた所を、城のメイドとして雇われ生活している。


 白く長い髪の毛のウィッグをつけ、だぶだぶな修道服に模した布のローブ、ナチュラルな化粧できめ細やかな肌を演出し、ずれ気味の丸メガネを装着したところアルフィリーナそっくりのシスターが見事に出来上がっていた。


「そなたにはアルフィリーナのかわりに、しばらくの間修道院で仕事に専念して貰いたい、謝礼は当然出すぞ」


「わわわ、わかりました!」


 こうして、アルフィリーナのそっくりさんが生まれたのだった。



ーー修道院



「うわぁ、懐かしいなぁ……前任のシスター様がいた時、ここで暮らしてたよ……」


 みんなで背比べをして掘った柱の跡を微笑ましく眺めるスフィア。


「あのー、こんにちは~アルフィリーナさん~」


 スフィアは寝室のドアをそっと開ける。


 ギィー……


 ダンジョンの扉のように不気味な音を立てて開く扉の奥には、毛布をかぶりボリボリとなにかを貪る『何か』がいた。


「し、失礼しました~」


 ガチャ!


「こ、怖かったよぅ」


 スフィアはこの部屋には入るまいと決意する。


『そなたにはシスターのマニュアルを渡しておくから、その通りに仕事をこなして欲しい』


 レジーナ姫の台詞を思い出すスフィア。


 さっそくマニュアルに目を通す。


「主な仕事は怪我人などの治療かぁ……私魔法なんて使えないなぁ……あ、でも! アルフィリーナさんの調合した薬がたくさんあるからこの辺はできそうですねっ!」


 棚に使い方や名称が振ってあり、分かりやすく置かれている。


「あ、可愛いポスター!」


『お客様へ、私シスターアルフィリーナが出かけている際は、名簿に名前だけ記載して、ご自由にお薬をお持ちください、修道院の物で役に立つものが有ればそれもご利用頂いて構いません、大変ご迷惑をおかけして申し訳ございませんが、何卒よろしくお願い致します、貴方に神の御加護があらんことを……』


 スフィアは絶句していた。


「こ、こんなに皆さんの事を考えて! お薬のストックだって二カ月分くらいありますよ! しかも無料で配布なんて……」


 シスターアルフィリーナの頑張りが、伝わってきた。


「前任者さんのように酔い潰れてみんなに当たり散らしていた人となんだか違うみたいですね……私っ! 頑張りますっ!」


 スフィアは偉大なアルフィリーナを元気にする為、頑張って仕事をこなす事を決意した。


 まあ、当の本人は二階で食っちゃ寝生活を満喫中なのだが……



ーー中央広場



 レジーナ姫にいただいたお給金を持って、中央広場に集まる市場で買い物をするスフィア。


「とりあえずっ! アルフィリーナ様に美味しいものを食べさせてあげないと!」


 スフィアは料理に関しての能力が非常に高い。肉を美味しく焼くシェフが一般的だとすれば、スフィアは肉自体を高級肉に昇格できるといえば分かりやすいだろうか。


「おうシスター様! この間はありがとうな! おかげで万引き? いや強盗が減って助かったんだ、これ持って行きなよ!」


「あ、ありがとうございますっ!」


 当然身に覚えはない、どこのシスターが強盗をやっつけられるというのだ。


 スフィアは首を傾げる。


(アルフィリーナ様ってシスター様だよね?)


「しかし、まさかこんな非力そうなシスターさんがあんな強そうな男達をやっつけるなんて、すごいねぇ、シスターさんにしとくにはもったいねぇな! がはは!」


(アルフィリーナ様、そんな事までやってるんだ……でも、か弱い女の子がそんな事をしちゃ危ないんじゃ……)


 スフィアは袋一杯の野菜をもらい、お礼を言ってその場を去った。


(一体アルフィリーナ様って何者なんだろう)


 スフィアは巨大でいかついトロールのような女の子を想像した。


(私っ! 似てないじゃないですか?!)


 スフィアは落ち込む。


「みなさん、私の事をからかって遊んでるんだ……ひどいよ……」


「おーい、シスターさーん!」


「あっ! 道具屋さん、どうしました?」


「ん? あんたアルフィリーナちゃんじゃねーな?」


(そりゃバレるわー!!)


「しーっ! 違うんです! 私はアルフィリーナ様じゃないとダメなんですっ!」


 ムーっとするスフィアからただならぬ気配を感じ取った道具屋の主人は、話を聞いて事情を察した。


「なるほどな、以前屋根から落ちて俺の足、アキレス腱が切れちまったんだわ、意識を失ってもうダメだと思ったが、お嬢ちゃんが治してくれたんだよ、今はほら! 完全に治っちまった! そのお礼が言いたくてな」


 ぴょんぴょん跳ねる道具屋の主人。


「でも、当の本人は今病んでいて大変なんです、しかもあれは薬で治るものでもなくて……ふぇ」


 スフィアは思わず泣きだす。


「おいおい、こうして見ると本当にそっくりさんだなあんた! アルフィリーナちゃんも良く泣いてたな……そうだ! これ持って行きな! 使うと少しはあのお嬢ちゃんも元気になるかもな!」


 忘却のオルゴールというアイテムをもらった。


「必ず会いに来るように言います! ありがとうございましたっ!」


「おう! またな!」


(アルフィリーナ様、あなたは私と違って、こんなにも皆さんに必要とされているんですよ、早く元気にならないとダメなんですからね……)


 スフィアは心の中でそう思ってはいても、まるで自分の事のように嬉しくなっていた。


(人に感謝されるって、素晴らしい事ですね、ふふふ)



ーー貧民街



「えっと、ギルドホールのニーナさんに依頼されていた薬を届けたら今日のお仕事は終わりです……ふぅ、シスターさんの仕事は大変だぁ」


 すでにシスターの仕事ではない事に気づいていないスフィア。


 一息ついていたスフィアに、ゴロツキ達が声をかける。


(ひのふのみ……うわぁ、強そうな人が七人もいますよ!)


「おいねぇちゃん! この間はよくもコケにしてくれたなぁ」


 このゴロツキ達は、以前アルフィリーナが中央広場で反省させた事があるゴロツキだった。


「誰ですか! 変な事をしたら大声出しますよ?」


 しかし、スフィアはそんな事を知らない。


「忘れるなんて酷いぜねぇちゃん、それに大声出したって誰にも聞こえやしねぇよ」


 どかっ!


「きゃっ!」


 軽く肩を押されただけだが、スフィアは激しく壁に打ち付けられた。

 押された時の影響で布の服が少し破け、ウェストとブラジャーが露出する。


「なんだ? この前の強さはどうしたんだ? なんか弱いぞこいつ、やっちまえ!」


「いやぁぁああああ!」


 ただの村娘であるスフィアには、ゴロツキをやっつけられる力などない、されるままに押し倒され、ピンチを迎えていた。


 男達に手足を押さえつけられて、身動きが取れないスフィア。


「か、身体は許しても、心までは許さないんですから!」


 スフィアはキッと睨みつける。


「そう言っていられるのも今のうちだ!」


 服を剥ぎ取られそうになるのを眼前にした時、ゆっくりと一人の男性が近づいてきた。


「そうかな……」


 スフィアを押さえつけるゴロツキを、ポケットに手を突っ込んだまま蹴り飛ばす男。


「お嬢ちゃんは下がってな……」


「あ、ありがとうございますっ!」


 スフィアは乱された衣服を軽く直すと、男の後ろに隠れた。


「さて……狩りの時間だ……」


 エターリア・フォルテスは、スフィアに優しくウィンクをすると、ゴロツキ達を成敗する。その姿は魔王のようだった。


「あの、ありがとうございましたっ!」


「本物のお嬢ちゃんによろしくな……」

 

 タバコを吸いながらフォルテスは、スフィアの頭をポンポンと叩いて去って行った。


「なんて格好の良い人なんだろう……アルフィリーナさんの彼氏かなぁ、すごい素敵、良いなぁ……」



ーー修道院寝室



 相変わらずのアルフィリーナがいた。


(道具屋さんにもらった忘却のオルゴール、使ってみよう)


 オルゴールを置きドアを優しく閉めると、スフィアは台所で料理を始める。


「うわー、アルフィリーナ様ってお料理もこなすんですね! 調味料や調理道具がすごく使いやすく並んでますよ」


 スフィアは料理が得意なので、その辺はすぐに分かった。


 完成した料理をテーブルに並べると、美味しそうな香りがただよう。


「うん! 美味しい! これならアルフィリーナ様も喜んでくれるかも……」


 ギィー


 扉の開く音が聞こえ、二階からものすごく凝視してくる視線を感じた。


「あ、アルフィリーナ様……私、スフィアと申しますっ! 今日はかわりに仕事をさせていただいて!」


「……いぢめる?」


「いえ! 決してそんなことは致しません! いぢめないですっ!」


「……」


 アルフィリーナは恐る恐る二階から降りてくる。ボサボサの髪、着古しのパジャマ、汚れたメガネで美しくなかった。


 ふらふらと揺れながら、不気味な笑みを浮かべたかと思うと、アルフィリーナはテーブルの席についてボーッとする。


(この子、いやこの方が聖職者アルフィリーナ様……言われてみれば私と似てるかも……)


「あのっ! アルフィリーナ様? お口に合うかはわからないですが! 召し上がって下さい!」


「……」


 アルフィリーナはボーッとしていたが、美味しそうな香りによだれを垂らさずを得なかった。


 にへら~と笑みを浮かべると、アルフィリーナは目の前に並んだ食事をがっつく。


「アルフィリーナ様! おかわりもありますんで! ゆっくり食べてくださいいい!」


 ぶはっ!


 がっつきすぎてむせるアルフィリーナ。


「ああ! アルフィリーナ様、顔を出して下さい、はいっ、タオルで拭きますからね~」


「……」


「がふがふ、はぐ、ずびすび、ずー」


「すごい食欲ですね……美味しいですか?」


 しかし、答える事なく、またボーッとするアルフィリーナの目からは涙がツーっと流れていた。


「アルフィリーナ様!?」


「……ふぇ、うわああああああん!!」


 突如泣きだすアルフィリーナにあたふたするスフィア。


「私の作る料理なんかより、美味しい、私なんか、私なんかっ!!」


「アルフィリーナ様っ!!」


 スフィアは優しくアルフィリーナを抱きしめると、頭を撫でて諭す。


「スフィアちゃんだったよね、私の代わりなんかさせちゃって大変だったよね? 服だってぼろぼろになるくらい迷惑をかけちゃったんだよね? 私なんか生まれて来なければ良かったんだよ!」


「違います! 話を聞いて! 私はまだ今日一日だけでしたけど、アルフィリーナ様が立派に仕事をしているのを肌に感じました!」


「嘘だっ! 私なんて何もしてない! みんなにいぢめられて蔑まれて生きるのだって、昔となんにも変わってないんだ!」


(なんなのこの人、聖職者とかいうからさぞ待遇が良くて、みんなに慕われているのかと思ったら、私と同じで寂しくて苦しい思いをしているただの女の子じゃない!)


「彼氏さんが助けてくれたのも嬉しかったです、あんな彼氏が欲しいなぁって! みんなアルフィリーナ様に感謝しているんですよ」


「へっ? 私彼氏なんていないですよ? シスターですし、恋愛厳禁ですし?」


「えっ?」


 みるみるとスフィアの顔が赤くなる。


「しかも、彼氏欲しいんだ……そか」


 明らかに論破して勝ち誇ったような人みたいに、不敵な笑みを浮かべるアルフィリーナ。


(ええ、確かに彼氏が格好良いと思いましたよ! なんだか、無性にムカムカしてくるのは一体なんなんでしょうね! この人はっ!)


 これは、似たもの同士だからこそ起こる嫌悪感というものなのだが、二人には分かっていなかった。


「ええ! 悪かったですねっ! あんな、人を殺してそうな目をしながらすごく格好の良い優しい男の人、好きにならないわけがないでしょう?!」


「しかもフォルテスさんかぁ、ニヤニヤ」


「馬鹿あっ!」


 気まずい雰囲気の続く中、お食事会は続く。


「あの、スフィアちゃん?」


「もうっ! 話しかけないで下さい! アルフィリーナ様なんて大嫌いです!」


「ごめんね、今日一日大変じゃなかった?」


「大変でしたよ! 変なゴロツキに酷い目に合わされるし? まぁ未遂でしたけど! ふんっ!」


「そかぁ……やっぱり私なんか……」


 落ち込みそうになるアルフィリーナに気づいたらフォローを入れたくなるスフィア。


「でも? なんかみんな感謝していましたよ? 野菜もこんなに貰っちゃいましたし? 道具屋の主人も足が治ったから遊びに来いって言ってましたし!」


「足……治ったんだ……良かった……」


「さっきのオルゴールだって、道具屋の主人がくれたんですよ?」


 アルフィリーナはテーブルの上にオルゴールを置き、大事そうに見つめる。


「そうだったんだ……これ、昔いた修道院の賛美歌が流れて……懐かしいなぁ」


 笑顔でオルゴールをいじるアルフィリーナ。


(アルフィリーナ様は多分、家族に飢えてるんだろうな……そんな気がする)


「以前セリーヌちゃんと強制労働施設を脱出した時に、一緒にいた子供達もここにいたのは数日だけ、みんな引き取られて行っちゃったんだ……寂しいなぁ……」


(やっぱり)


「私! そろそろ帰ります! ふんだ!」


「そうかぁ……」


 バタン!


 荒々しくドアを閉めたスフィアは帰って行った。


「また寂しくなるねぇ、私、もうこんな生活嫌だよ……」


 アルフィリーナはオルゴールに向かって話しかけていた。


「なにも考えたくない……寝よ……」


 気怠さに流されて、テーブルに突っ伏したまま、アルフィリーナは眠っていた。



 ……



 ……なんだろう



 ……何かに呼ばれてる気がする



「……様っ!」



「アルフィリーナ様!」


「ん? 誰?」


「アルフィリーナ様、決めました! 私、ここに住みます!」


「ほえ?」


「荷物は全部持ってきました! 幸い私だって家族に見捨てられ、メイドとして働いていたんです! レジーナ姫様も私の境遇を心配して今回の仕事を任せたんです! 友達の心配をむげにして、自分ばっか不幸だなんて思うなぁ!!」


 スフィアはこの似たような境遇に苦しむアルフィリーナが放って置けなかった。


「一緒にいて……くれるの?」


 よたよたとスフィアに歩み寄るアルフィリーナ。


「当たり前じゃないですか! こんな迷惑なシスター、私がそばにいないでどうするんですか! まったく!」


 叫ぶスフィアに飛びついて泣くアルフィリーナ。


「アルフィリーナ……様?」


 寂しかった、ただそれだけ、スフィアが戻って来てくれただけでなんでこんなに涙が止まらないんだろう、全身脱力して、嗚咽して苦しかろうが、泣き叫ぶアルフィリーナは美しく可愛らしかった。


「私だって、私だって寂しかったんだからあああ!!」


 スフィアも同じくらい泣いていた、レジーナ姫にメイドとして仕えて数年、仲間はいても、家族に飢え、日々寂しい日々が続く、本心をぶつけ合い罵りあってもなお一緒にいたいという気持ち、アルフィリーナに感じた感情はそれだった。


『うわああああん!!』


 こうして、アルフィリーナはスフィアにフォン・クラウン家名を与え、スフィア・フォン・クラウンとして、家族に迎え入れた。


 一方、スフィアはレジーナ姫の許しを得、修道院の専属メイドとしてアルフィリーナに使える事を誓う。



ーーアルファン城謁見の間



「という事で、スフィアはすごい剣幕で城を出て行ったのだが、果たして、これで良かったのだろうか……」


「アルフィリーナは……寂しかった」


(確かに、カルディナのいうとおり、家族がいない生活というのは寂しいものなのだろう、特に頑張り屋で無理をするアルフィリーナなら尚更ねぎらって欲しいのかもしれん)


「しかし、カルディナ! 親友のアルフィリーナのみならず、配下の憂いまで取り除くとは、さすがだな」


「あの子も……寂しそうだったから……」


 カルディナはレジーナ姫にふわりと抱きつくと、満足そうに微笑んでいたのだった。

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