第10話 エネルギー生産ライン

 まず肝心要の発電施設は、バイオディーゼル発電機に決定しました~。そしてそれを動かす燃料はウッドチップを使ったバイオマス燃料に決定です!


 蒸気でタービンを回す原子力や火力発電などのメジャーな火力発電系はこの場所に向いていない。安定かつ発電量の大きいこの施設は海か湖とセットで運用しなければならないからです。


 ということなので、周りにたくさんある木材から燃料を生成してそれを使い発電する方式に決めました。


 必要な設備は、発電の中核[バイオディーゼル発電機]、木材から燃料を作成する[ガス化炉]、ガス化炉から出る副産物を収納する[圧縮コンテナ]、木材をチップにする[木材粉砕機]、それぞれの機械間を輸送する[物流ベルトコンベア]と[液体輸送パイプ]だ。


 木材の収集は今の所は人力の予定。ここもいつか機械に頼りたいね。


 まずは発電機の位置だけど、これが破壊されたら施設の全機能停止に追い込まれるから重要だね。考えるまでもなく一番防御が厚い家の入口横になるね。


 私はマニピュレーターを取り出しビルダーモードに切り替え脳波操作で[バイオディーゼル発電機]に設定する。トリガーを一度引くとガイドレーザーの先にホログラムが表示される。そのホログラムを家の入り口横に移動しもう一度トリガーを引くと製造が始まりました。


 以前と同じようにバックパックから材料を持ったナノドローンが出動し底面から徐々に出来上がっていく。


 発電機は、ぱっと見四角い鉄の箱で、形は横長の長方形だ。全長は私がねそべったぐらい、全幅は片腕の長さほど、全高は胸丈ほどの大きさです。

 一番広い面には扉がついていて、そこを開くと中にはエンジン、発電ユニット、燃料タンク、バッテリーそして無線送電キューブが搭載されていた。すべて入ったオールインワン仕様の発電機です。


 それを見た私はつい癖で「もうちょっといじって出力を上げられそうね」とつぶやいてしまった。改造して設計図と変わるとリペアーで直せなくなるんだけど、やりたくなっちゃうんだよね~。


 私は発電機の扉を閉めて正面に移動する。正面の上方には制御装置のパネルがあり燃料0%、出力0%と表示が出ている。その下部には[液体輸送パイプ]を接続できる搬入口はんにゅうこうがあった。そして裏面には排気口と青い無線送電キューブがはめ込まれていた。


 発電が始まれば、この青い無線送電キューブが空中へと浮かび上がって必要なところに無線送電するんだよね。


 よく知った構造だったことに安心して次の設備に移ることにした。


 次は[ガス化炉]ですね。これもビルダーでお手軽に製造していく。設置場所は発電機から三歩ほど離れた場所です。液体輸送パイプで燃料を搬入するので近すぎると将来分岐するときにパイプの取り回しが大変になるからね。


「うーん。やっぱりナノドローンの消費が多いね」


 ウッドチップの熱分解過程をナノドローンで無理やり高速化するのでナノドローンの消費量が結構多いねー。補助機能なしのむき出しのナノドローン生産機だと2日分の生産量だね。維持に使う分も考えると後々生産機のベース基地も作らないといけないと頭の片隅においておこう。


 ガス化炉が完成したらそれをよく確認します。大きさは私の背を有に超える。見た感じの形は立方体の上に円柱が乗っかってる。円柱は透明なタンクになっていて、その上下の二つを何本ものパイプがつないでいる。直方体の正面はウッドチップの搬入口があり、左面には副産物の搬出口がある。そして背面にはバイオ燃料の搬出口はんしゅつぐちがあり、それはちょうど発電機の搬入口と向かい合っている。


 すぐに液体輸送パイプで繋ぎたくなる。けれども主要設備の設置の前につなげてしまうと面倒が起こる。それは問題が起きて再設置が必要になると接続までやり直しになることです。なので最後に接続するのが基本なんだよね。


 ガス化炉の中を覗こうかなと思ったけど、この機械は専門外なので内部構造を見ないで次の設備に取り掛かることにしました。


 次は[圧縮コンテナ]だね。空間圧縮技術を使った汎用型のコンテナです。形は立方体で搬入口と搬出口がついているシンプルな作りになっている。


 設置する場所は[ガス化炉]の副産物の搬出口がある方向です。これもビルダーでポンと設置する。設備を設置するたびに金属資源が減っていく……。この不安を解消するために早く資源採取までたどり着きたいね。

 

 エネルギー製造ラインの最後の設備の[木材粉砕機]を設置していく。[ガス化炉]の木材搬入口と[木材粉砕機]の搬出口を向かい合わせにして設置する。


 出来上がった[木材粉砕機]は高さが身長の倍はある巨大な直方体だ。側面にハシゴが設置されていて、木材投入口のふちに登れる。上面はV字状の穴があり底を覗き込むと凶悪そうな回転刃が見えてかなり怖い。作業用スーツ着用が前提の機械なので安全柵すらない。ここに居るとスーツを装備していてもなんだかゾクゾクする。


「落ちたら機械のほうが壊れるだろうけど怖いなぁ」


 さっさと縁から降りてハシゴがついている逆側に回り込む。そこにはシンプルな工業用アームが付いていて、近くに木材を検知するとそれを掴み上げ粉砕口に投げ込む仕様になっている。点検扉を開けて内部を覗く。構造は電気モーターと回転刃だけのシンプル構造だ。モーターの出力を上げれば処理スピードを上げれそうだね。


 設備の設置が終わったら次はお待ちかねの接続です。まず設置するのは[物流ベルトコンベア]です。


 物がベルトコンベアを流れていくのを見てると、とっても落ち着くよね……。え?そんな事ない? いや同じ感覚の人も絶対いるはずです!


 おっと話がそれちゃたね。そんな私の好きなコンベアなんだけど今回はたった三歩分で、しかもストレート……。ちょっと寂しいけど仕方がないですね。


 ビルダーを[物流ベルトコンベア]接続モードにして、[木材粉砕機]の搬出口と[ガス化炉]の搬入口の二点を選択してトリガーを引く。すると自動経路検索が働いて設定した区間にベルトコンベアのホログラムが現れた。それは一本の長いベルトタイプではなく小さな帯が連なる蛇の腹のようなタイプのエプロンコンベアと呼ばれる物だった。


「うん……まっすぐで短い……。でもエプロンコンベアはグッドだね」


 もう一度トリガーを引いて実際にベルトコンベアを設置した。実物になってもやっぱりちょっとさみしい。将来的には様々なものが流れるベルトコンベアの大河を作りたいね。


 次に[ガス化炉]から副産物を輸送するコンベアルートも設置する。こちらも同じ長さでくストレートな経路です。


 コンベアの設置が終わったら次は[液体輸送パイプ]を繋いでいく。[ガス化炉]のバイオ燃料搬出口から[バイオディーゼル発電機]のバイオ燃料搬入口へと接続する。パイプの接続部以外は透明の蛇腹状で中にどの液体が流れているのかがよく見えるようになっている。


 繋ぎ終わった施設を眺めると見事にT字型の面白みのないラインになってしまった。今は遭難中かつ資源も少ないと自分を納得させて施設を稼働させることにする。


「稼働する前にいくつか木材を運んでおかないとね~」


 家から少し離れれば、ドラゴンがなぎ倒した木がたくさんある。しばらくはこれを[木材粉砕機]に入れれば木を切らずに電源の確保ができる。


 私はすぐ森の際まで移動した。そして倒木の下に両手を差し込んで抱え上げる。重力下で結構重いけどスーツのパワーアシストがあるので難なく待ち上がった。倒木は長くてバランスが取りにくいはずだけど、それもスーツのバランサーが働いて楽に運べる。


 木を設備にぶつけないように注意しながら粉砕機のアームがある面に倒木をゴロンと落とした。ここまで運べばあとはアームが勝手にやってくれるはずだね。


「あれ?」


 しかしアームはうんともすんとも言わない……。なぜ動かないのかと首をひねる。


「ああ、粉砕機に電力がないじゃん。私ってマヌケだなぁ」


 私は発電機のところに行きスーツのバックパックから接続コードを伸ばし無線送電キューブに接続した。


「バックパックからキューブへ送電っと」


 私は左腕の操作パネルでバックパックからキューブへの送電を開始した。


《システムオンライン。無線送電を開始します》


 音声案内と同時に青いキューブが浮かび上がり送電を開始した。電力を供給された粉砕機のアームが動き出し倒木を掴んだ。


《エラーコード AE-3948》


 今度こそ順調に行くかと思いきや粉砕機がエラーコードを吐いた。


「もう! 今度は何!?」


 私は音声案内ではなくコードを出してきたことでイラつき始める。


 なんとなく気がついてたけど、やっぱり使えるようになった設備は一昔前の設備のようだ。


「ええとAE-3948、AE-3948っと」


 左腕の操作パネルでエラーコードを検索していく。エラーの内容が直ぐに見つかりその内容が”木材が長すぎる”と一言で片付くことだったことで思わず。「もう! それぐらい音声案内を入れといてよ」と愚痴をこぼした。


 私はイライラしながら木材を切るためにスーツに内蔵されている工具の一つを取り出した。


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