第9話 インテリジェンスソードね……
お知らせ
4/22に1~8話の以下の項目を編集しました。
・3話の後半ティエルの名前がティエリになっていたのを修正しました。
・ティエルのセリフのカッコを『』に変更しました。
・無線通話のカッコを『』から機械音声通信の《》と肉声通信の〈〉に変更しました。
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うるさい剣とその他の武具をティエルの部屋の床に並べる。やっぱりうるさい剣、いやこれからは騒音ソードと呼ぼう。とにかくあの剣は必要だったようで、ティエルは一番興味深そうに調べている。
『やはり内部でM粒子が動いていますね。まるで基板の電気信号のようです』
「へぇーそうなんだ。それで他に何か用事ある?」
私の問にティエルは空中でひと回転する。遠心力で足が広がりまるで赤ちゃんをあやすオモチャのようだった。
『あとは回収した二つの宝石も出しておいてください』
「わかったー」
私はマニピュレーターを通じてバックパックからゴブリンとドラゴンの宝石を床の上に転送した。
『ありがとうございます。あとはこれらを調べ終わるまで休んでいて結構ですよ』
「りょうかーい」
私は、ティエルに武具と宝石の調査を任せて休むことにした。自分の部屋に戻るとリペア装置に横たわり蓋を閉じる。バックパックがあるので横向きにしか寝られなかった……。
《おかえりなさいませ。スーツチェック――注油開始します》
ティエリとは雲泥の差がある無機質な音声案内が流れた。そして、リペア装置内にうす黄色いマシンオイルが注ぎ込まれ装置内を満たしてゆく。体が浮かぶと仰向けに向きを変えやっとリラックスできた。
《軽微損傷を確認。修理完了までイチ、時間サン、ジュウ分です》
切り貼りされた旧式の音声案内に苦笑いし、多少の不安を覚えながら少しだけ眠ることにした。
目をつぶるとこの星に来てからの長い一日を思い出す。会社のバカ大型艦が目の前に現れてからまだ一日しか経っていないけど、すごく長い一日だったな~。それにしてもゴブリンやドラゴンが本当にいたんだよね。いつか魔法も見れるといいなぁ……―――――。
◆
《スーツの修理が完了しました。生体情報のバックアップ完了》
無機質な声で目を覚ます。
一度眠ったおかげで頭がスッキリしたみたい。ポッドから油が排出されだし再び重力を感じ始める。
「ぐえええ!」
腰にバックパックをつけていたのを忘れてたよ。そのせいで、エビぞり状態になってしまった。メリメリと背骨が伸ばされる感覚に耐えきれず私は慌てて飛び起きた。
うぐぐ、寝起きにこれは痛い……。ポッドもドアも別のものにしたいなぁ。でもそうなると、企業ライセンスをもらった[ルムム]に金を払って家具やハウスポットをアンロックしないといけないね……。
「遭難してもお金に悩まされるなんて、こんな事あるぅ!?」
頭の中のモヤモヤが言葉となって外に飛び出した。
《マスターおはようございます。剣についてお話がありますのでこちらに来てください》
ん?騒音ソードについて何かわかったのかな? 私はスーツの溶けた部分が直っているのを確認してからティエルの部屋へと向かった。
「おはよー、騒音ソードについて何かわかった~?」
フヨフヨと浮いているティエルに声をかける。武具は端っこに追いやられ、部屋の中央には宝石と騒音ソードが置かれていた。武具の調べはもう終わりこの二つにかかりきりのようだ。
『騒音ソードってその呼び方はあまりにも……。いえ、そんなことよりこの剣についていくつか分かったことがあります』
ティエルはそう言うと判明した事実を教えてくれた。まずこの剣の構造だが電気信号の代わりにM粒子を用いた機械のようなものだということだ。そして、出す音のパターンがかなり豊富らしい。
『そして凄いのがここからです』
「なになに?」
ティエルは剣の付近まで降下しクラゲの足のような接続用のコードを近づけた。その先端にはドリルアタッチメントが付いていてキュイーンと回転を始めた。そのドリルを騒音ソードへとじわじわと近づけていく。
「拒否! 拒否! いいえ! ダメ!」
すると剣が大声で拒絶し始めた。私は思わずこう叫んだ!
「キェェアァァァ! シャベッタァァァァ!」
あーびっくりした! 寝る前まで分けわからない音を出してたのに急に喋り始めたよこれ……。
『マスター落ち着いてください。ご覧の通りこの剣が話す言語の一部を解読しました!』
そうか解読したのね、それで翻訳機能が働くようになったのね……。
「あれ?ってことは、この剣はずっと何か喋ってたってこと?」
『そうなりますね』
意思を持った剣か……。
「こいつってインテリジェンスソードだったのね」
『ご存知なのですか?』
私は、ファンタジー知識の中に当てはまるものがあったので思わず言ってしまった。
「うん、魔法の力で意思を持った剣だね」
『ファンタジーな物なのにゴブリンやドラゴンとだいぶ反応が違うのですが?』
たしかに、私的にはインテリジェンスソードはあまり好きじゃない。というより正直にいうと見飽きた物の一つだ。
「まぁ喋る剣は正直見飽きたのよ、小さいころさぁ同級生の男児がみんなサポートビットを剣にしてたの覚えてない?」
私が小さい頃の話なんだけど、サポートビットを空中を飛ぶ剣の形にするのがブームになった事があった。なのでファンタジーに喋る剣が出てきても見飽きたどころか空も飛べない下位互換な存在に見えてしまい、どうもテンションが上がらなかったのよねー。
『記録にありますね。そう言われると確かに見慣れたものですね』
「でしょ? 魔法の力を使って電気と同じことしかできないから微妙でしょ?」
私がそう言うとティエルはクルクルと回転しながら『原理は全く違うのですが……マスターは結果主義ですね』とつまらなそうに言った。
「とにかくそれはティエルに任せるよ。それより、これからどうする?」
私が次に何をするべきか尋ねるとティエルは回転を止めた。そして私をじっくりと観察しながら私の周りを一回りした。
『脳派、心拍数、その他諸々正常値になりましたね。もう私が指示しなくても正しい行動を取れるでしょう』
墜落でおかしくなっていた私の精神状態が正常になったみたいだね。それでティエルは私が物事を自分で判断できると判定したようね。確かに少し眠っただけでだいぶ調子が良くなったし、変に焦った感じもなくなったなぁ。
「そっか、じゃあ必要そうなものから適当に作っていくことにするよー」
『はい、そちらはお任せします。行ってらっしゃい』
ティエルはそう言うとティエルは布で騒音ソードを磨き始めた。
「$#&、許可。先程、回転、#$#%、穴開ける、□#%、拒否!」
剣はティエルが行うことに色々と反応しているようだ。拒否する言葉が重点的に解読できている事には目を瞑ることにしよっと……。
「じゃー行ってきまーす」
そう言うと私はティエリの部屋を出て外へと出てる。そして、冷静になった頭で改めて周囲の状況を確認していく。
ハウスポッドの近くには私の身長の三倍ぐらいの大きな土山がある。その土山の表面には雑草の新芽が出ていることから最近土を被せられたということがわかる。その山の一部が私の宇宙船によって中央付近までえぐられていて、そのえぐられた穴にハウスポットがすっぽりと収まっている。
土山の周囲は掘り返されたような地面があり、さらにその外側には森の方へとなぎ倒された倒木がぐるりと囲んでいた。その倒木は外側に行くほど新しかった。
どうやら、ドラゴンは少しずつ土を盛り土山を大きくし、土を掘る場所が狭くなれば木を押し倒して範囲を広げていたみたいだね。
もしかしてドラゴンからしたら巣を襲撃された上に殺されたってことに……。本当に悪いやつだったのだろうか?
「あーもう! やってしまったことは仕方がない! 今は先に進むの!」
モヤモヤしながらも私は先に進むことにした。この先必要な物のためにまずは第一歩を決めなくては。
生存はスーツの機能で事が足りるので、まず優先すべきことは身の安全だ。初めの目標は弾丸の自動供給だ。頭の中で武装強化までの道のりを逆算していく。
まず[弾丸補充]をするためには[弾丸制作]が必要ね。制作には[アセンブラ作成]の必要があり、それには[金属資源収集]をする必要がある。資源収集には[採掘機作成]をする必要があり、それを動かすために[エネルギー生産]が必要になる。
ティエルが以前に言っていたように”~するための”が何度も続いた。そしてたどり着いた第一歩はエネルギー生産だった。
「エネルギー生産かー。スーツの発電力じゃ機械を動かすほど蓄えられないね」
私は、ビルダーのメニューを呼び出し作成可能なエネルギー生産施設を検索し観覧していく。条件にあった建築物がずらりと表示される。
縮退炉――プラネットバスター付きの大型艦でも作る気?こんな莫大なエネルギー今はいらないわ。
核融合炉――建築資材がないし何よりこの周辺は水がない。向いてないわね。
原子炉――鉄すら無いのにウランの供給とか無理だね。それにこれも大量の水が……。
私は検索条件に水の量が少なくて済むと条件を追加して検索し直した。
「うーん、今の状態だとこの組み合わせがベストみたいね……」
私は数あるエネルギー生産施設から一つの組み合わせ選びエネルギー生産ラインを作ることに決めた。
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