土地神様の花嫁御寮 08

 どこからともなく現れた徒人ひとの子と、千年も昔の極東を気侭に旅して回る。

 そんな夢の中で、は一人ぼっちの人外ばけものだった。


『私が一緒にいてあげる』

 己の非力さを知らず、あまりに無知な子供の言い様を内心では嘲り笑いながら。かといって、一方的に掴まれた手を振り払ってしまうこともできず。孤独という牢獄から引きずり出された時。そこにあったのは、目も眩むほどに眩いばかりので。

『さぁ、どこに行く?』

 行くあてがないなら探せばいいと、気楽に笑って歩きだす。身勝手な子供の一言から、二人の長いようで短い旅路ははじまった。


 その結末は、ありふれた悲劇。


 たった一人のよすがに先立たれ、いつしか孤独でなくなっていた人外ばけものの輝かしい日々は再び闇に閉ざされる。

 冷めた骸に取り縋りながら身も世もなく泣き暮れて。そのままずるずる、幾百年。


『鬼王さま――』

 心ない人の手で地脈の礎とされながら。それでも生き長らえた人外ばけものの、安息を失った心臓にとどめを刺したのは。年端もいかない幼子の、焼けつくような憎悪に満ちた――

『まってて、ね』

 血の一滴で、鬼王わたしは死んだ。


 かなでわたしが殺した。

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