第4話 対面
店の中は外観に比べ、意外と広い造りになっており、内装も落ち着いた感じでかなり僕好みである。店の中は明るい雰囲気で、店内にはポップなBGMが流れており、店の温度も快適な温度となっている。
周りを見渡すが、どうやら彼女はまだ来ていないらしい。
「いらっしゃいませ。お客様は1名様でございますか。」
僕は、慣れた接客でこちらに近づいてきた若い女性の店員に、もう1人後から来ることを伝え、席へと案内された。
案内された席でアイスコーヒーを注文して待つ。
数分が経ち、僕を案内してくれた女性が注文のアイスコーヒーを持ってきてくれた。僕はアイスコーヒーを飲みながら、カバンの中から読みかけの本を取り出し、来るまで読んで待つことにする。僕は本を読むことが昔から好きでよく読んでいる。
本の内容は、高校生探偵が事件を解決していく探偵ものである。このシリーズは結構長く続いており、僕はこのシリーズが好きで今まで全巻読んでいる。今僕が読んでいるのはちょうど、昨日発売したものである。もちろんすぐ買いに行った。
「すいません、龍崎虹空先生ですか」
どれくらいの時間が経ったのだろう。
不意に僕の前方から声を掛けられた。
僕は本から顔を離し前の方に顔を上げていくと、そこには背筋がすっと伸びており、体型はスレンダーで彼女の服装がさらにそれを強調している女性がいる。
やがて僕の目線が彼女の目線と合う。
彼女は綺麗な整った顔をしており、絶世というわけではないが、おそらく誰に聞いても美人であるという回答が返ってくるであろう程美人であった。
女性からは落ち着いた空気感が流れており、まさに男にモテそうだなという印象を受ける。
「お待たせして申し訳ございませんでした。赤城紅葉と申します。今日は来て頂きありがとうございます」
紅葉は快斗に座る許可を取り、席に座ると最初にそう言い頭を下げた。
「改めて赤城紅葉と申します」
「吉田快斗です」
紅葉は店員に僕と同じアイスコーヒーを頼み、注文が来るまでの間お互いにあいさつを交わす。
「実は枡谷の方が別の案件が入ってしまい、来れなくなってしまったんですよね」
紅葉は申し訳なさそうに僕に告げる。
「いえ、構いませんよ」
「ありがとうございます。それで、枡谷から聞いていると思いますが、これから枡谷の補佐として先生の担当をさせて頂くことになりました」
「はい、枡谷さんから聞いています」
以前、編集社に行った際に枡谷から聞かされていた。
紅葉は今年入社した新人であり、教育係として比較的年が近い枡谷が選ばれた訳だった。その関係で枡谷の補佐という形で僕の担当になったということだった。
「さっき、僕の顔になにかついてましたか?」
紅葉が来て目が合ったときに一瞬紅葉が驚いたような表情をした気がした。
「――いえいえ、少し驚いてしまって。先生がこんな若い方だったなんて」
「がっかりしましたか?」
「いえいえ!むしろ今とてもテンションが上がっております!」
紅葉は唐突に人が変わったように目を輝かせ言う。
どうやら、入社する前から僕の作品を読んでいたらしい。枡谷が僕の担当だということを知り、紅葉はとても運が良いと嬉しがっていたようだ。その中で、枡谷から僕が実は若く、まだ大学生だということを知らされとても驚いたそうだ。
いかに僕の小説が素晴らしく優れているか、また同世代でこれだけの物語を紡げる僕がすごく、尊敬の念が尽きない――ということを身振り手振りで僕に教えを説くように説明する。
いったい僕は何を聞かされてるんだ――
僕はここに何をしに来たのか一瞬分からなくなる。手紙とかでは僕に対する賛否両論をもらう。ありがたいと思う。しかし、直にこう言う風に言われるのは初めてだった。
他の人からすれば恥ずかしいことこの上ないが、快斗には特に思う事は無かった。
――この話はいつ終わるのだろう
快斗は話が終わるのを菩薩のような心で待つこととなる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます