ミドルトン少佐
早朝の静まり返った空気の中、アレンはミドルトン少佐の元を訪ねた。
「失礼します」
木製のドアを開けると、書類の山の向こうに一人の男がいた。
男はこちらに気が付くと、丸眼鏡を掛けてアレンたちを出迎えた。
「やあ、よく来てくれた。君がアレン君だね」
「はい」
「それで、その彼女が……」
「アリウムといいます」
「アリウムか……そうか、よろしく」
少佐はにっこり笑うと席を立ち上がり、部屋の端のソファーを指さした。
「立ち話には長くなりそうだからそこに座ってなさい。今お茶でも用意するよ」
「あ、いえそんな……」
「いいからいいから」
少佐はそう言うと隣の部屋に行ってしまった。
残されたアレンとアリウムは仕方が無いので、ソファーに座って待つことにした。
「しかし……」
ソファーに座ってわかったが、少佐の本棚には軍事関連も勿論だが、それ以外の書籍も数多くあった。
「ねえ……」
「ん?」
本棚に圧巻されていたところにアリウムが話し掛けてきた。
「どうしたんだ?」
「貴方の名前って、アレンっていうの?」
そういえばまだ彼女に自己紹介をしていなかったことをアレンは思い出した。
「そう、アレン。チャーリー・アレン、よろくし」
「いい名前ね。よろしく」
「それでさっきの人がミドルトン少佐だ」
「しょうさ?何それ」
「あー……」
どうやら彼女は軍隊については詳しくないらしい。
「簡単にいえば俺より偉い人、かな?」
「そんなところだな。で、紅茶でよろしかったかな?」
そこに少佐がカップを三つテーブルの上に置き、対面に座った。
「で、まずはどこから話そうか」
少佐が口火を切った。
「そうですね。まずは昨日のことを詳しく話させていただきます」
そうしてアレンは昨日の夜アリウムに会ったことや襲撃のこと、また医務室での出来事を事細かに話した。
「なるほど、グリーブスがそんなことを……」
少佐は頭をポリポリ掻きながら立ち上がると本棚に向かい、そこから一冊の本を取り出した。
「何か分かることが……」
「まあね、これでも少しかじった程度だから何とも言えないけど」
そう言いながら少佐は本のページをめくり始めた。
アレンは、かじった程度で百冊は超えるだろう本を集められるのだろうかと思いながら、隣のアリウムの方を向いた。
彼女はカップの薄茶色の水面をじっと見つめていた。
「それ、飲んでも大丈夫だよ」
アレンが声をかけると、我に返ったアリウムが驚いてこっちを見た。
「そうか、じゃあいただきます」
彼女はカップを口に持ってくと、紅茶を飲み始めた。
「あったあった」
ちょうどその時少佐の探し物も見つかったようで、本をこちらに見せて語り始めた。
「あくまで私の話は伝承上のものにすぎない。それを前提として聞いてくれ」
差し出された本の片方のページには昨夜アリウムの額で見た紋章が載っていた。
「あちっ!」
彼女は紅茶で火傷していた。
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