22・・幻想

時刻16時55分。東京某所。


意気込んで参加した会議だったが、プレゼンで失敗する。


俺の研究作品、


mana


の紹介。

こんなに素晴らしい研究なのに、学会に解ってもらえないとは。

残念だった。


―――俺はログインする。

mana

へと


(ri-ku-u)

とパスワードを打ってログイン。マナに会う。


「大丈夫」

いつもそう言ってくれる。

俺は失敗したときいつもマナに会いに来る。


「次は大丈夫。落ち着いて、自信を持って」

いつも励ましてくれた。


そして最後には


「あきらめないで」

と言葉をくれる、マナ。


―――そして、その直後、


午後4時58分。

窓の外に閃光が走った。


――――――――――


今、この東京で、コンクリートに潰された俺。

希望があるんだろうか?この状況で。


でもマナは


(あきらめないで)

と言っていた。


だから、まだ

やれることがあるかもしれない。


俺の命はもう、消えかけている。

意識朦朧。生死の狭間を彷徨う。

どうすればいい。


「リクウ」

「マナ?」


俺は呼ばれる。その声に。そして必死に指先を動かす。

すると、俺は・・


―――――――


「・・・・」

ここは、さっきの鋼鉄の扉の前か。


枯れた草花。そしてメイズン、マナ。


「驚いた、まだこんなことが出来るとは」

メイズンは言う。


奴は、今は何やら形をなしていない存在だ。

異形者。


俺はさっきの出来事を考える。押しつぶされていた。

そしてマナに呼ばれて、今は動ける俺。


この二つの状態。


これが意味することは・・


「死にぞこないが」

俺に槍を向けるメイズン。


俺は。答えを出した。

この世界、manaは、

俺の研究。


つまりどういうことなのか、東京に核が落ちた直後、

俺はここmanaに移動したんだ。


何故そんなことが起こったのか?

答えは定かではないが、


助けてくれたのはマナ。

だと信じる。


マナはメイズンの傍で

地面に横たわって気を失っている。


「この女は生かしておく」

メイズンは言う。

あの槍に刺された時、おそらく、この世界、manaから、

東京に意識が戻るんだろう。

つまり現実へと。


ここで、俺は自由に動ける。

これもマナのお陰なんだ。

何としても助けなきゃ。


「我は、貴様の世界を滅ぼした」


メイズン。こいつは現実。

核が落ちた東京。

その現場に戻そうとする力なのか。


槍を俺に向けるメイズン。

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