21・・値する

俺は鍵?

メイズンの槍は、俺をかすめる。


「つ!」


「逃げて・・」

マナはかすかに言う。


「これは運命だ!」


メイズンはそう言うと、更に槍を放つ。


「痛!」

俺は腕を斬られる。


この痛みは、何だろう?しかもどういうことか、足が動かない。


「リクウ・・!」

マナが俺を見つめながら言う。すると、枯れていた辺りの草花が、

光を放ちながら生い茂っていく。


「なに!?」

メイズンは驚愕している。俺の傷が、みるみる治っていく。


「ありがとうマナ」


更に、マナはメイズンへと手を向けた。

祈っている。するとメイズンの動きを鈍らせている。


「マナ!」

俺は何かを察知して叫ぶ。

危険だ。メイズンは脅威。恐ろしいものを秘めている。

さっき喰らった、槍の痛みが教えてくれる。

メイズンの動きは鈍りながらも、槍の矛先はマナへと向けられる。


(まさか!?)


「これは運命だ!」


避けられぬもの。そんなことが、

世には存在する。確かに。でもマナは。絶対に守る。


―――メイズンの槍はマナに向けられ、そして放たれる。

俺は、恩を返さなければならなかった。絶対に。

俺を救ってくれたこの大きな恩を、必ず返す。

素早く動く。


「!?」

メイズンは狼狽える。それもそのはず、俺の動きは

もはや、この世界のルール上の限界スピードを超えている。

マナの前に出て庇い、メイズンの槍の一撃を、俺は胸で受ける。


「!?」

驚いたのはメイズン、そして俺。この痛み、絶望、一気に押し寄せる。

ここで槍を受けた理由が、俺の心を左右する。それは、


(マナを庇う為)


理由として充分だった。


俺はやり遂げなければならない。槍を胸で受けた状態。

この状態からメイズンを倒す方法を、見出さなければ。

ドクッと脈打つその胸。その一瞬。


―――――――


俺の頭に浮かぶ文字。

あの鍵の教会で見た文字。


七七

×ム

をマナの鏡に映した結果は。


ナナ 


×ム、の文字を

マナ と見れるように角度を調節した結果。



マナ 

カカ


(カカ)

この文字は歪んでいたため、読み方はいろいろあるだろう。


俺はある言葉を想像した。そして

この世界は、どこかに繋がる樹だと考える。

つまり、この槍が刺さっている痛み、

これこそが、真実。


俺は思い出そうと、突き刺さった槍と

身体の部分に意識を集中する。


そして探す、俺自身を。


―――――――

―――――

―――


動かない、動けない。


それもそのはず。

身体の上にコンクリートブロックが乗っているのだ。


痛い、そして暗い。阿鼻叫喚。


「た・・助けて」


俺は悲鳴を上げる、つもりだったが、

こんなにひしゃげた声だったか?

喉が痛く、熱い。


なんだここは?どこなんだ?


深闇。そして静寂。希望のない絶望。

これがメイズンが言ってた運命か?


あの文字の答え、


(カカ)

は、


カク。


核。


核 マナ

時計 4時58分


だった。

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