第17話 二人はきっと仲が良い

放課後、俺と龍と理沙の三人は二年生昇降口の物陰に隠れて彼女が出てくるのを待っていた、


「おい、斎条美優はまだかよ!」

龍が小声で聞いてくる、


「そんなこと俺が分かるわけないだろ」

合わせて小声で答える。


「お前ら登下校一緒だったんだろ、なんでわかんねーんだよ」


「先輩はいつも俺より先に待ち合わせ場所にいるから、いつ出てくるか分からないんだよ」

事実、彼女の生体は謎に包まれている。

「第一、別に龍達は来なくても良かったのに何で来たんだ?」


「おもしろそうだったから!」 「面白そうだったからよ!」

二人揃って親指を立てながら言っている、本当に仲良いなお前ら………


「何被せてんのよ龍!」


「はぁ?被せてきたのはお前だろ!」


「いや!私の方が0・1秒早かった!」


「いいや!俺の方がそれより0・2秒早かった!」

け、喧嘩が始まった……


「二人ともその辺にしといた方が………」


「奏太は黙っててくれ!」 「奏太は黙ってて!」


「えぇ」

こうなってしまったからには俺にはもう手はつけられない、


「また被せやがったな!」


「はぁ?龍の方でしょ!」


「……………………」

もう無理だ、俺にはなんとも出来ない。

そう思っていると、


「何を騒いでいる三バカ」

天音先生がやって来た。

……………ちょっと待てよ、俺もその三バカに数えられているのか?


「てか、こんな所に隠れて何してるんだ?」


「やだな~先生、忍者ごっこに決まってるじゃないですか」

龍が誤魔化す様に言う、


「え?」


「……………は?」

そりゃそうなりますよね、天音先生はかなり戸惑っているが俺もそうだ。


「それじゃ失礼しま~す、さようなら~」




「き、気を付けて帰りなさいね」


未だに戸惑っている天音先生をよそにその場を後にし校門の方に向かう、


「今日は諦めるか………」


「そうだな………」


「でも明日は土曜日で学校休みよ………」


「あっ」 「あっ」

どうしたものか…………


「おい、あれ斎条美優じゃないか?」

龍が彼女を見つけてくれたようだ、


「でかした龍!」


「行ってこい奏太!」 「行ってきな奏太!」

二人に背中を押され歩き出す。



彼女は今のところ道を間違えてはいないようだ。

しかし本来、この先にある枝道を左に曲がらないといけないのだが、恐らく彼女は………………


そのまま見ていると彼女は左には曲がらず、見事に枝道をスルーした。

もしこの世に方向音痴を競う大会が有ったとするならば彼女はきっとぶっちぎりで世界一位を取れるだろう、俺はそう確信している。




そんな世界一位の彼女を後ろから見守っていると我が子をはじめてのおつかいに送り出す親になった気分になってしまって、つい本当の目的を忘れかけていた。

俺の目的は彼女とちゃんと話し合うことだ、まず何もかもが話しかけない事には始まらない。


折角、龍と理沙が背中を押してくれたのだ………………




一息吐いた俺は彼女に追い付くように歩くスピードを上げ、勇気を振り絞り彼女に告げる。




「先輩、ちょっと良いですか?」

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