第15話 朧月
「もしもし?すまん、相談がある」
「どうしたよ、奏太」
そう、俺が電話を掛けたのは龍だ、おもえば昔から何か相談事と言うと龍だったな、
まぁ、龍以外に男の友達がいないだけなのだが。
「あぁ、少し困った事になったと言うか、なんと言うか……」
「ほぉ、でも電話じゃ分かりにくいし、どっかで会って話さねえか?」
「そうだな、じゃあ龍の家の近くのファミレスで良いか?」
………………
電話をきってから母に出掛けることを伝える。
「すまん、今から出掛けるから晩飯作れそうにない」
「りょ~かい」
そして、家を出て龍と待ち合わせをしている店に向かう。
駅で私鉄に乗り二つ目の駅、そこから歩いて数分で待ち合わせをした店に着く。
店に入ってすぐのテーブル席に龍は座っていた。
「すまん、遅れた」
「別にいいぜ~とりあえず座れよ」
そう言われ席に座ると龍は注文ベルを押し店員を呼ぶ
「何か注文するのとか有るか?」
龍に聞かれ注文表を見ていると店員が来る。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「あ、じゃあ、ドリンクバーお願いします」
注文を聞くと店員は厨房の方へと向かっていった。
そして、ドリンクバーで紅茶を淹れ席に戻ると龍が聞いてくる、
「それで?相談って何だよ?」
「あぁ、それが結構話すと長いんだが良いか?」
「大丈夫だぜ~」
龍は親指を立てながら言った。
「ありがとう…………………俺が小学校に上がる前の話だけど、その頃仲の良かった女の子がいたんだよ、でも突然その女の子は何も言わずに引っ越しちゃって………」
「奏太に女の子の友達がいたなんてな…それで?」
龍の質問答えるように話を進める。
「その女の子と再会した、て言うか再会してた」
「してた?」
龍は不思議そうに鸚鵡返ししてくる、
「そう、その再会した、とどの詰まり昔友達だった女の子が問題なんだよ」
「何?有名人的な感じの人?」
龍のこの質問は強ち間違ってはいない気がする、
「まぁ、間違っては無いんだけど…………斎条美優だったんだよ……」
そう言うと龍は一瞬理解できなかった様だったが理解したであろう瞬間、椅子から飛び上がり聞いてくる、
「それで?その事本人には伝えたのか?」
まるで始めてカブトムシを見た少年の様なキラキラした目をしている。興味深々らしい。
「……伝えた…けど何か口論みたい感じになってしまった」
「ん?」
龍はゆっくりと椅子に座り更に聞いてくる、
「どうして口論なんかになったんだ?斎条美優はその昔の事ってのを忘れてたとか?」
「昔の事はきちんと覚えてたよ、どうして口論になったのかはあまり分からないけど理想を求めすぎたって言うか、なんと言うか………」
「それで、相談の本題ってのはどうやったら蟠りが解けて仲直り出来るか?みたいな感じなのか?」
龍は話を聞いて相談の本題までたどり着いてくれたようだ。
「まぁ、仲直りって言うか蟠りが解けて無くなるだけで良いんだが」
「ん~そうだな~」
龍は軽く握った拳を口に当てて考えている、昔からの癖だ、その様子を見て俺ももう一度考え直してみる。
彼女が望んだ俺の姿、彼女が望んだ俺の言葉、彼女が望んだ〈あの時〉の結末、
自信過剰なのだろうか、けれど、彼女と歩いた〈あの道〉は確かだったはず。
そして、俺が望んだ彼女の姿、俺が望んだ彼女の言葉、俺が望んだ〈あの時〉の結末、
自己中心的だろう、あったとしても自己満足なのだろう、でも望んだものはあったのだから。
思考を進めていると龍が口を開く、
「俺なら結局は謝ってから話し合うかな、そうしないといつまでも解決しないままだし、理沙は頑固だしな」
笑いながら龍は龍ならではの結論を出してくれた、
「そうか、ありがとうな」
「おうよ!」
「悪いな、話聞いてもらって、ここは奢るよ」
…………………………
龍と別れ家までの帰路を辿っている時、ふと空を見上げると月が見えた、生憎の曇り空で風に流された雲は月を光ごと拐ってしまう、
けれど、拐われても尚、月は光続け雲から出てきた少し霞んだ月はより一層綺麗に見えたのだった。
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