第11話 嵐の前の騒がしさ


「着いたっぽいですよ、先輩」


誘われたのは俺だったはずなのに、俺が動物園まで道案内をしてるのは何故なのだろうか?


「そうね、さっさと入りましょう」


彼女はそう急かしてくる。




大きな門を潜ると直ぐに園の案内板が見えた、


「何処から見て回りましょうか?」


先輩に訪ねる。


「パンダが見たいわね」


パンダか、定番だな。


「良いんじゃないですか?」




「じゃあ、決まりね」


彼女はそう言って歩き出す。




「先輩……そっちは逆です…」


とてつもない既視感だ…


「し、知ってるわよ!」


彼女は頬を赤らめそう言うと、正しい方向に向き直して歩き出す。








パンダの飼育小屋の前にて…






「そう言えばパンダって漢字だと熊に猫って書くらしいわよ」


猫背な熊でパンダなのだろうか?


でも普通の熊も猫背の様な気がするけどな。


「そうなんですか……」




「猫背と言えば、あなたも結構な猫背よね…」


彼女はそう言ってくる、俺の事をバカにしているのだろうか?


「猫背なのは認めますけど、僕はあんなに寸胴じゃないですよ……」




「そうね、あなた以外と背が高いものね」


まぁ、一応中学のバレー部ではセンターを勤めていた程には背が高いな。


「これでも、中学の時はバレーやってたんですよ…」




「そうなの?今は?」




「今はやってないです、中学最後の大会で負けてそれ以降一回も…全国一歩手前だったんですけどね…」




「へぇ、そうなんだ…」


彼女は何かを察した様だ。






「さぁ、昔話はここまでにして他のところも見てみましょうよ」


こんな話をしていたところで意味は無い。




「そうね、次は…………………………」














パンダ、キリン、象、ライオンに虎、見事に動物園の定番ばかり見て回った結果、時間はもう昼の三時……




「小腹が減りましたね…」




「そうね、其処のレストランにでも行きましょう」


そう言って彼女はレストランの方を指を指す。








レストランに入り、テーブル席に着く。


メニューを見てみると、意外と品揃えが良いでは無いか、


コーヒーゼリーが有るのはかなりの加点対象だな。


「ご注文はお決まりでしょうか?」


店員が注文を聞きに来る。




「ブラックコーヒーとコーヒーゼリーで」




「私も同じの下さい」










コーヒーを飲んでいると彼女が喋り出す。


「ここの動物園って植物園も併設されてるの、後でそっちにも行ってみましょうよ」




植物園に行って何があると言うのだろうか?


まぁ、そんな事を考えても何の意味も無いのだけれど…




「良いんじゃないですか?」


当然、俺に断ると言う選択肢は無いのであった。






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