第10話 方向転換

ここは?………



またあの夢か………

周りでは子供達が遊んでいて、俺は一人ぼっち…

すると、やはり幼女が此方にやって来て、


「ねぇ、きみはなんで一人ボッチなの?」

幼女は前回と同じ事を聞いてくる。


「わからない」

俺も前回と同じく考えてもいないのに言葉を発していた。


「じゃあ、わたしとお友だちになろうよ!!きみのお名まえは?」

これも前回と同じ問いだ、


「そうた……いずみそうた……きみは?」

前回と同じ俺の答え、

そして…………


「そうね…わたしの名まえは……………………………



前回同様、同じところで夢から覚める。


「はぁ」

起きて早々、俺は溜め息を吐いた、

今日は五月三日の日曜日、あの女と出掛ける約束をしてしまった日だ。


それにまたあの夢、不思議でしょうがない

唯一分かった事は夢の中では目は動かせるけど、体は動かないと言う事だけ…


そんな夢の事を考えながら俺はリビングに向かう。


「おはよう~奏太」

リビングでは既に母が朝食を食べていて、俺の分の朝食も出されていた。


「いただきます」

俺も朝食を食べ始めると、母が喋り出す。

「あっ、そう言えば今日の夕方に奏が帰ってくるわよ」


「え?そうなの?」

奏は俺の妹で全寮制の学校に行っている、

だが、何故直前になってそれを言うのだろうか?

「何で当日になってからそれを言うんだよ」

母にそう聞くと、

「あ~忘れてたわ」

と言う、忘れてたのか…



そうこうしていると、すでに時計の針は九時四十五分を指そうとしていた。

だが、俺はここで少しの疑問を抱く、いつも待ち合わせ時刻の五分前にはその場に居る彼女は一体いつから居るのだろうか?

そんな事を思い俺は家を出る、

待ち合わせ時刻の十分前にエントランスに着くと、それと同時に彼女がやって来た。


「あら、珍しいわね先に来てるなんて、そんなに楽しみだったの?」

彼女がニヤニヤしながらそう聞いてくる。

「違いますよ、先輩がいつも五分前には居るから気になっただけです」

俺がそう言うと、

「何よ、つまんないわね」

彼女はそう言った。

「僕に面白さを求めないで下さいよ」


そんな話をしながら俺と彼女はマンションを出る。


「動物園までは電車で行くから…先ずは駅に行きましょう」


「はい……」

彼女はそう説明するが、駅とは真逆の方向を向いている。



「…………………………」



「………ねぇ、駅ってどっちよ?」


やっぱりね!そうだと思ったよ!

本当に彼女は方向音痴だ、

引っ越してきてから一週間は経つと言うのに、歩いて五分の駅の場所も分かってないのだ。

「先輩、駅はこっちですよ……」

結局俺が案内するのか……


そうして俺と彼女は動物園へと向かうのだった。

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