第8話 少年は夢から覚めない
教室に向かうと、龍と理沙は既に来ていて、
仲睦まじく話していた。
「おはよう」
そう挨拶すると、
「よっす!奏太」
「おはよう」
と、二人は返事する。
俺が話に混ざろうとすると、タイミング良くチャイムが鳴り、それと同時に先生が教室に入って来て。
「席につけ~ホームルーム始めるぞ~」
そう言った。
その後、授業を受け昼休みになると龍と共に購買に向かう。
俺の学校では昼休みの間に昼食を済まして五限の準備をしていなければいけない事になっている。
購買でパンを買って中庭に行くと以外と人が少ない、
中庭と言ったらもっと青春を楽しんでいる様な奴等がうじゃうじゃ居ると思ったのに。
「以外だな、もっと人居ると思ったのに」
「あぁ、俺もそう思ってた…」
その中庭は広く、真ん中に大きな桜の木が立っていて、
それに向かう道と桜を囲うようにベンチが置かれている。
ベンチに座り、パンを食べながら龍に問い掛ける、
「なぁ、龍は子供の頃の夢を見たりする事って有るか?」
「ん~、有ると言えば有るな」
龍の答えはそうだった。
「因みにどんな夢なんだ?」
更に問い掛ける、
「あ~、俺が見るのは殆ど理沙に悪戯してしばかれている時の夢だな」
「…………随分かわいい夢だな」
そう言うと、龍は反論してくる。
「そんなにかわいい物じゃねーよ」
龍は続けてこう言った。
「あいつ、俺にやり返すとき本気で殴ったり蹴ってたりするし、あいつの家でオヤツ食ってて、ふざけてプリン盗み食いした時なんてジャーマンされて、のびてたら鼻の穴にわさび入れられたからな!!」
「理沙はプリンが大好物だからな、因みにそれっていつの話だ?」
そう聞くと、龍は直ぐに答えてくれた。
「たしか…中一の時だったな」
中一にも成ってオヤツを盗み食いする龍…
そして何よりも、中一でジャーマンする理沙って何者なんだ……
「それは…龍が悪いんじゃないか?」
そう龍に聞くと、
「いや、そうだけど…ジャーマンだぞ!ジャーマン!!あいつは鬼だよ鬼、人じゃねぇ!!」
龍は理沙の事をそう言った。
すると、後ろから足音が聞こえる、龍はまだ気づいていないらしい。
「その鬼ってのは、こう言うジャーマンを掛けるのかしら!?」
理沙が颯爽とやって来て、ベンチの後ろから龍を抱き抱えジャーマンスープレックスを喰らわせる。
「グハッ」
と断末魔を上げ龍は地面に倒れた。
更に追い討ちを掛けようとする理沙を制止する。
「そのぐらいで止めてやれ…」
それはそれは、綺麗なジャーマンスープレックスだった。
「………しょうがないわね、今回は許してあげるわ…」
理沙は許してくれたようだ。
意識が無くなっている龍を保健室まで運び、五限に向かう。
どうせ今日は五限で下校だし、龍はしばらく寝てるだろうから、放課後に起こしに来よう……
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